判旨
最高裁判所は、裁判所法7条2号に基づき、旧刑訴法及び刑訴応急措置法が適用される事件の抗告について、同法等により特に最高裁判所の権限に属すると定められたものに限り裁判権を有する。本件のような保釈保証金没取決定に対する抗告はこれに該当せず、不適法である。
問題の所在(論点)
旧刑訴法及び刑訴応急措置法下の事件において、高等裁判所がなした保釈保証金の没取決定に対し、最高裁判所への抗告が認められるか。裁判所法7条2号の定める最高裁判所の裁判権の範囲が問題となる。
規範
裁判所法7条2号により、旧刑事訴訟法及び刑事訴訟法応急措置法が適用される事件の抗告について、最高裁判所が裁判権を有するのは、刑訴応急措置法18条等の規定に基づき、特に最高裁判所の権限に属するものと定められた抗告に限られる。
重要事実
被告人は窃盗罪で懲役1年6月の判決を受け確定したが、大阪高等裁判所は、被告人が逃亡したとして旧刑訴法119条3項に基づき保釈保証金12万円の没取決定をした。これに対し被告人は、当時は運転手として稼働しており逃亡の事実はなく、当該決定は違法であると主張して最高裁判所に抗告を申し立てた。
あてはめ
本件は旧刑訴法及び刑訴応急措置法の適用を受ける事件である。裁判所法7条2号は、最高裁判所の権限を「法律において特に定めるもの」に限定している。刑訴応急措置法18条等を確認しても、保釈保証金の没取決定に対する抗告を最高裁判所の権限とする規定は存在しない。したがって、本件抗告は最高裁判所の裁判権に属しない事項を対象とするものであるといえる。
結論
本件抗告は、最高裁判所の権限に属しない不適法な申し立てであるため、棄却を免れない。
実務上の射程
事件番号: 昭和22(つ)4 / 裁判年月日: 昭和22年12月8日 / 結論: 棄却
裁判所法第77条第二號にいう訴訟法において特に定める抗告とは、民訴應急措置法第七條又は刑訴應急措置法第十八條に定める抗告のように、訴訟法において特に最高裁判所の權限に屬するものと定められた抗告をいうのであつて、その他の高等裁判所の決定及び命令に對する抗告を含まない。
新刑事訴訟法下の実務において、高等裁判所の決定に対する抗告(再抗告)は、憲法違反や判例抵触を理由とする場合に限定される(刑訴法405条、433条)。本判決は旧法下の判断であるが、最高裁判所の管轄権が法定の例外的な場合に限定されるという基本的枠組みを示す。答案上は、特別抗告や再抗告の適法性を論じる際の、管轄権の法定性の基礎的理解として参照し得る。
事件番号: 昭和23(つ)10 / 裁判年月日: 昭和23年7月23日 / 結論: 棄却
裁判所法第七條にいう「起訴法において特に定める抗告」とは、訴訟法に於て特に最高裁判所の權限に屬するものと定められた抗告をいう。
事件番号: 昭和25(し)51 / 裁判年月日: 昭和25年12月19日 / 結論: 棄却
高裁がなした保釈取消決定に対する本件特別抗告はこれを不適法として棄却すべきものである。
事件番号: 昭和23(つ)7 / 裁判年月日: 昭和23年7月17日 / 結論: 棄却
裁判所法第七條にいう「訴訟法において特に定める抗告」とは、訴訟法に於て特に最高裁判所の權限に屬するものと定められた抗告をいう。
事件番号: 昭和56(し)86 / 裁判年月日: 昭和56年9月22日 / 結論: 棄却
在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、同法九六条三項による保釈保証金没取請求事件につき在監者が特別抗告を申し立てる場合に準用される。