在監者の上訴申立に関する刑訴法三六六条一項は、同法九六条三項による保釈保証金没取請求事件につき在監者が特別抗告を申し立てる場合に準用される。
刑訴法九六条三項による保釈保証金没取請求事件につき在監者が特別抗告を申し立てる場合と同法三六六条一項の準用の有無
刑訴法96条3項,刑訴法366条1項,刑訴法433条
判旨
保釈保証金没取決定に対する特別抗告の申立てについては、刑訴法366条1項の「監獄にいる被告人が提出した申立書を監獄の長に差し出した時に申立てがあったものとみなす」という特則が準用される。
問題の所在(論点)
刑訴法96条3項に基づく保釈保証金没取決定に対する特別抗告において、刑訴法366条1項(在監者特則)が準用され、監獄の長への差し出し時に申立ての効力が生じるか。
規範
刑訴法366条1項(いわゆる「在監者特則」)は、身体を拘束されている者の上訴等の機会を保障する趣旨の規定である。保釈保証金没取請求事件は、刑事被告事件の確定後の手続ではあるが、実質的には刑事上の処分の手続の性質を有するものである。したがって、当該手続における不服申立てについても、在監者特則の準用があると解するのが相当である。
重要事実
申立人は、保釈保証金没取決定に対し、抗告期間の最終日である昭和56年6月16日以前の同月13日に、在監中の刑務所へ特別抗告の申立書を差し出した。しかし、刑務所がこれを最高裁判所に直送したため、本来の提出先である原裁判所が申立書を受け付けたのは期間経過後の同月19日であった。
事件番号: 昭和57(し)96 / 裁判年月日: 昭和57年9月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定が確定している場合、当該決定に憲法違反があること等を理由としてさらに不服を申し立てることは不適法である。 第1 事案の概要:東京地方裁判所が申立人に対し、保証書をもって代えることを許された保釈保証金20万円の没取決定をした。これに対し、申立人は抗告および特別抗告を行ったが、いずれ…
あてはめ
本件は保釈保証金没取請求事件であり、被告事件確定後の手続であるが、刑事上の処分の手続としての性質を有する。申立人は抗告期間内である6月13日に在監中の刑務所長に申立書を差し出している。在監者特則が準用される結果、原裁判所への到達が期間経過後であっても、刑務所長への差し出し時点で適法な申立てがあったと評価される。
結論
保釈保証金没取決定に対する特別抗告の申立てに刑訴法366条1項は準用されるため、本件申立ては適法である(ただし、抗告理由は認められず棄却)。
実務上の射程
刑事手続に付随する「刑事上の処分の手続」一般において、在監者の権利保障の観点から在監者特則が広く及ぶことを示す判例である。答案上は、不服申立期間の遵守が問題となる事案で、手続の性質を論証した上で特則の準用を認める際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(し)9 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金没取決定(刑訴法96条2項)をするに際し、被告人または弁護人に陳述の機会を与えないことは、憲法29条および31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈中に逃走または召喚に応じなかった等の事情(詳細は判決文からは不明)により、第一審裁判所が刑訴法96条2項に基づき保釈保証金の没取を…
事件番号: 昭和32(し)51 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所が抗告裁判所としてした決定に対しては、刑事訴訟法428条2項に基づく異議の申立てをすることはできない。したがって、かかる決定に対してなされた異議申立てを不適法として棄却した原決定に憲法違反の違法はない。 第1 事案の概要:申立人は、大阪地方裁判所による保釈保証金没取決定に対し、大阪高等裁…
事件番号: 昭和26(し)65 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、裁判所法7条2号に基づき、旧刑訴法及び刑訴応急措置法が適用される事件の抗告について、同法等により特に最高裁判所の権限に属すると定められたものに限り裁判権を有する。本件のような保釈保証金没取決定に対する抗告はこれに該当せず、不適法である。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪で懲役1年6月…
事件番号: 平成26(し)560 / 裁判年月日: 平成26年11月18日 / 結論: その他
1 受訴裁判所によってされた刑訴法90条による保釈の判断に対して,抗告審としては,受訴裁判所の判断が委ねられた裁量の範囲を逸脱していないかどうか,すなわち,不合理でないかどうかを審査すべきであり,受訴裁判所の判断を覆す場合には,その判断が不合理であることを具体的に示す必要がある。 2 公判審理の経過及び罪証隠滅のおそれ…