道路交通取締法違反の事実について甲簡易裁判所のした略式命令が確定したところ、右の略式命令発布後その確定前に乙簡易裁判所も亦同一事実につき公訴提起略式命令の請求を受け略式命令を為しこれが確定した場合には、後に起訴を受けた乙簡易裁判所は刑訴三三九条一項四号に則り決定を以つて公訴を棄却すべきであつて、乙裁判所がした右略式命令は法令に違反するもので本件非常上告は理由がある。
甲簡易裁判所の確定略式命令があつた事実につき更に乙簡易裁判所がした略式命令の確定と非常上告
刑訴法458条1号,刑訴法339条1項
判旨
同一事実について二重に公訴が提起された場合、後になされた公訴提起については決定をもって公訴を棄却すべきであり、これに反してなされた略式命令は違法として破棄を免れない。
問題の所在(論点)
同一の犯罪事実について二重に公訴が提起された場合、裁判所がとるべき措置、および公訴棄却の手続きを怠ってなされた裁判の効力が問題となる(二重起訴の禁止)。
規範
同一の犯罪事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑事訴訟法339条1項4号に基づき、決定をもって公訴を棄却しなければならない。この規定は、一事不再理の原則や被告人の防御負担軽減の観点から、重複する公訴を排除するものである。
重要事実
被告人は、無免許運転の犯罪事実について昭和26年1月31日に大牟田簡易裁判所へ公訴提起(略式請求)され、同年2月8日に罰金1千円の略式命令を受け、3月17日に確定した。しかし、右略式命令の確定前である2月13日、鳥栖簡易裁判所に対し、同一の無免許運転の事実および業務上過失傷害の事実について重ねて公訴提起がなされた。鳥栖簡裁はこれに対し、2月14日に罰金5千円の略式命令を出し、2月24日に確定した。その結果、同一事実について二つの略式命令が相前後して確定する事態となった。
あてはめ
本件における無免許運転の事実は、先行する大牟田簡裁の公訴と同一である。後行の鳥栖簡裁は、刑訴法339条1項4号に基づき決定で公訴を棄却すべきであった。しかし、同裁判所はそのまま略式命令を発したため、一つの犯罪事実に対し二個の略式命令が併存・確定する結果を招いている。これは法令の適用に明白な誤りがあり、被告人にとって不利益な裁判であるといえる。
結論
二重起訴に係る部分の原略式命令を破棄し、当該事実に関する公訴を棄却する。併合された他の罪(業務上過失傷害)については、改めて罰金刑を言い渡す。
実務上の射程
二重起訴(刑訴法339条1項4号)の典型的事例。答案上は、一事不再理(確定判決による既判力)の問題と混同せず、先行する公訴が係属中(または確定前)に後続の公訴がなされた場合の形式的終結事由として位置づける。本件は非常上告の手続であるが、実務上、訴訟条件の欠如を見落として実体判決(略式命令を含む)に及ぶことの違法性を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和38(さ)9 / 裁判年月日: 昭和39年1月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】同一の犯罪事実について重ねて公訴が提起された場合、裁判所は刑事訴訟法338条3号に基づき公訴棄却の判決をすべきであり、これを看過してなされた略式命令は違法として破棄される。 第1 事案の概要:被告人は、普通貨物自動車の無免許運転を教唆したという道路交通取締法違反の事実につき、昭和33年2月28日に…