判旨
被告人の陳述権、証拠調請求権、証人尋問権等の行使を制限・抑圧する訴訟手続の違反が認められない場合、憲法37条2項に違反するとの主張は前提を欠き、失当である。
問題の所在(論点)
第一審において、被告人の陳述権や証拠調請求権、証人尋問権等の訴訟上の諸権利の行使が不当に制限または抑圧されたといえるか。また、その事実がない場合に憲法違反の主張が成立するか。
規範
被告人の権利(刑訴法311条、298条1項、304条、308条等)の行使が不当に制限・抑圧されていない限り、手続の違憲性は認められず、憲法37条2項等の憲法違反を理由とする上告は理由を欠く。
重要事実
被告人が第一審において、陳述権(刑訴法311条)、証拠調請求権(298条1項)、証人尋問権(304条)、及び証拠の証明力を争う権利(308条)の各行使を、裁判所によって制限または抑圧されたと主張した事案。被告人は、原判決がこれらの訴訟手続の違反を是認したことは、憲法37条2項(証人尋問権・弁護権等)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所が記録を精査したところ、第一審において被告人の訴訟上の諸権利(陳述権、証拠調請求権、証人尋問権、証明力を争う権利)の行使を制限または抑圧した事実は認められない。訴訟手続に何ら違法な点は存在しないため、これと同一の見解を採った原判決は正当である。被告人の憲法違反の主張は、かかる手続違反が存在することを前提とするものであるが、前提となる事実が存在しない以上、その主張は採用できない。
結論
被告人の権利行使を制限・抑圧した事実が認められない以上、訴訟手続に違法はなく、憲法違反の主張は理由がないため、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)5210 / 裁判年月日: 昭和28年3月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審で主張・判断されていない第一審の訴訟手続違背を上告理由とすることはできず、また、事実誤認を前提とした憲法違反の主張や単なる量刑不当の主張は適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が第一審の判決に対し控訴したが、控訴審判決後、上告審において新たに第一審の訴訟手続に違反がある旨を主…
被告人の防御権行使の制限が争点となる事案において、具体的権利の侵害事実が認められない限り、それを前提とした憲法違反の主張は認められないことを示す。実務上は、個別の手続規定の違反の有無を事実関係に即して検討し、その結果として憲法適合性を判断する枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和26(あ)4481 / 裁判年月日: 昭和27年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人が申請した証人を裁判所が不必要と認める場合であってもすべて尋問しなければならないとする趣旨ではなく、証人採用の要否に関する裁判所の裁量を認めている。 第1 事案の概要:被告人は、公判過程において特定の人物(CことD)を証人として申請した。しかし、原審(裁判所)はこの証人申請…
事件番号: 昭和26(れ)657 / 裁判年月日: 昭和26年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が単なる事実誤認の主張にすぎず、刑訴法405条の適法な上告理由に該当しない場合には、職権調査によっても判決を破棄すべき事由(同法411条)が認められない限り、上告は棄却される。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。上告趣意書において主張された内容は、原審の認定した…
事件番号: 昭和25(あ)3455 / 裁判年月日: 昭和27年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は裁判所がその必要を認めた証人の尋問権を保障するものであり、被告人が申請した全ての証人の取り調べを義務付けるものではない。また、自白の補強証拠として共犯者の供述等が存在する場合には、憲法38条3項の自白のみによる処罰禁止には抵触しない。 第1 事案の概要:被告人は第一審において、特定…