「被告人は賭博恐喝等の前科数犯あり、その乾分数名と無為徒食し常に粗暴なる言動ある為世人の嫌忌畏怖して居るに乗じ恐喝せんことを企て」なる起訴状の記載は、恐喝罪の構成要件たる事実であるから、これを起訴状に記載したことは違法ではない(昭和二六年(あ)第二一四四号同年一二月一八日当裁判所決定、昭和二五年(あ)第一〇八九号同二七年三月五日大法定判決理由参照)
恐喝罪の起訴状記載につき刑訴法第二五六条第六項に違反しない例
刑法249条,刑訴法256条6項
判旨
起訴状に犯罪の構成要件をなす事実が記載されている場合、それがたとえ予断を生じさせるおそれのある記述であっても、起訴状一本主義(刑事訴訟法256条6項)に違反しない。
問題の所在(論点)
起訴状に記載された内容が、犯罪の構成要件に該当する事実である場合に、起訴状一本主義(刑事訴訟法256条6項)との関係でその記載が許容されるか。
規範
起訴状に記載された事実が、当該犯罪の構成要件を構成する事実であるならば、その記載は刑事訴訟法256条3項に基づく適法な記載であり、同条6項(起訴状一本主義)に違反するものではない。
重要事実
被告人が恐喝罪の事案において起訴された際、検察官が起訴状に記載した内容が、裁判官に予断を生じさせる不当な記載であるとして、弁護人が起訴状一本主義違反および憲法違反を主張して上告した。
あてはめ
本件において、弁護人が問題とした起訴状の記載は、本件恐喝罪の構成要件をなす事実そのものであると認められる。構成要件に該当する事実の記載は、刑事訴訟法256条3項が求める「公訴事実」の特定のために不可欠なものであり、裁判官に予断を生じさせるおそれがあるとしても、起訴状一本主義に反する違法な記載とはいえない。
結論
本件起訴状の記載は恐喝罪の構成要件たる事実を記載したものであり、起訴状一本主義に違反せず適法である。
実務上の射程
起訴状一本主義(刑訴法256条6項)の限界を画する判例である。余事記載が予断を招く場合は公訴棄却(338条4号)の対象となり得るが、構成要件に該当する事実であれば、その記載は同条3項により強制されるものであるため、予断排除原則を理由に制限されることはない。実務上、犯行の手段・態様として不可欠な要素であれば、多少具体的であっても本判例を根拠に適法と主張できる。
事件番号: 昭和27(あ)801 / 裁判年月日: 昭和28年7月18日 / 結論: 棄却
一 所論は、要するに恐喝罪にかかる本件起訴状の前段記載に「被告人は…塩酸キニーネ一壜(約百五十瓦在中)価格約千円位のものを五万円の塩酸モルヒネと言う高価な薬だと偽つて売却方を依頼した如く見せかけた後」とあるのを指摘し、かかる記載は裁判官に事件に付予断を生ぜしめる虞のある事項にあたり、本件起訴は無効であるというのである。…