政府の免許を受けないで酒類を製造した行為を処罰する酒税法の規定が違憲でないことは、同種の行為を有罪とした当裁判所大法廷判決(昭和二四年(れ)第一五〇三号昭和二五年二月一日言渡大法廷判決)に徴し明らかである。
酒税法第一四条および第六〇条の合憲性。
酒税法14条,酒税法60条
判旨
政府の免許を受けずに酒類を製造した行為を処罰する酒税法の規定は憲法に違反しない。また、憲法37条の公平な裁判所とは構成等において偏頗の恐れがない裁判所を指し、事実誤認等の不利益は同条違反を構成しない。
問題の所在(論点)
1. 酒税法における無免許酒類製造の処罰規定の合憲性。2. 事実誤認等の不当な裁判がなされた場合に、憲法37条1項の「公平な裁判所」の裁判を受ける権利を侵害するか。
規範
1. 酒税法による無免許酒類製造の処罰規定は合憲である。2. 憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、裁判所の構成その他において、中立・公正な立場から裁判を行うことができ、偏頗の恐れがない組織的・客観的状態にある裁判所を意味する。個々の事件において、事実誤認等により被告人に不利益な裁判がなされたとしても、直ちに同条違反とはならない。
重要事実
被告人は、政府の免許を受けないで酒類を製造したとして、酒税法違反の罪で起訴された。これに対し被告人側は、酒税法の処罰規定が憲法に違反すること、および原審において事実誤認等により被告人に不利益な裁判がなされたことが憲法37条の「公平な裁判所」による裁判を受ける権利を侵害するものであること等を理由に上告した。
事件番号: 昭和26(あ)3990 / 裁判年月日: 昭和28年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の罪に対し、それぞれの罪について個別に刑を選択した結果、懲役刑と罰金刑を併科することは適法であり、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は三つの罪状について起訴された。第一審判決は、判示第一および第二の事実について懲役刑を選択し、判示第三の事実については罰金刑を選択した。その結果、主文に…
あてはめ
1. 酒税法の処罰規定については、過去の最高裁大法廷判決の趣旨に照らし、合憲であることは明らかである。2. 憲法37条1項の「公平な裁判所」の趣旨は、裁判所の構成等の客観的状況を指すものであり、本件において被告人が主張する事実誤認等の不利益は、裁判所の構成自体に偏頗の恐れがあることを示すものではない。したがって、裁判の過程や結果に不服があるとしても、それは公平な裁判所による裁判を否定するものではない。
結論
酒税法の処罰規定は合憲であり、また事実誤認の主張は憲法37条違反を構成しないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
憲法37条1項の「公平な裁判所」の意義を定義した重要判例である。司法試験においては、裁判官の忌避や除斥、あるいは裁判員の構成に関する論点において、本判例が示す「構成その他において偏頗の恐れがない」という規範を引用して、制度の合憲性や具体的運用の妥当性を検討する際の基礎として用いる。
事件番号: 昭和27(あ)4304 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が諸般の事情を考慮して法定刑の範囲内で刑を科した以上、執行猶予を付さず実刑としたことや、犯情の類似した他者と処罰に差異があることは、憲法14条の法の下の平等に反しない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決において執行猶予の言渡しを受けず実刑に処されたこと、および罰金刑ではなく体刑に処されたこ…
事件番号: 昭和26(あ)1444 / 裁判年月日: 昭和28年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織・構成をもつ裁判所による裁判を意味し、個別の事件における具体的内容の公正さを指すものではない。 第1 事案の概要:被告人らの弁護人が、原審における事実の認定や法令の解釈が公平でないことを理由として、憲法37条1項が定…
事件番号: 昭和28(あ)5108 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない主張、すなわち実質的な事実誤認の主張や単なる法令違反の主張は、適法な上告理由とは認められない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法違反および法令違反を理由に上告を申し立てた事案。弁護人が主張した「憲法違反」は実質的に事実誤認を指摘するものであり、「…
事件番号: 昭和27(あ)3931 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
外国人登録令第一三条で処罰する同令第一〇条の規定に違反して登録証明書を携帯しない者とは、故意に右証明書を携帯しない者ばかりでなく、過失によりこれを携帯しない者をも包含する趣旨に解するのが相当である。