外国人登録令第一三条で処罰する同令第一〇条の規定に違反して登録証明書を携帯しない者とは、故意に右証明書を携帯しない者ばかりでなく、過失によりこれを携帯しない者をも包含する趣旨に解するのが相当である。
外国人登録令第一三条第一〇条の法意
外国人登録令10条,外国人登録令13条
判旨
外国人登録証明書の携帯義務違反(外国人登録令10条、13条)については、行政取締法規としての本質に鑑み、故意による場合のみならず過失による不携帯も処罰の対象に含まれる。
問題の所在(論点)
外国人登録令10条違反(登録証明書不携帯)の罪を定めた同令13条の規定は、過失による不携帯も処罰の対象とするか。
規範
行政取締法規に違反する罪において、処罰規定が故意犯に限定されるか否かは、当該規定が取り締まる事柄の本質及び法意に照らして判断すべきである。具体的には、公共の利便や秩序維持を目的とする取締規定においては、明文がなくとも過失犯を包含すると解するのが相当な場合がある。
重要事実
被告人が、外国人登録令10条に規定された登録証明書の携帯義務に違反し、同令13条に基づき起訴された。弁護人は、本件が故意過失を問わず処罰する趣旨ではなく、故意が認められない以上処罰できないと主張して上告した。なお、原判決が「取締規定であるから故意過失を問わず処罰すべき」と判示したか否かも争点となった。
事件番号: 昭和26(あ)4877 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
政府の免許を受けないで酒類を製造した行為を処罰する酒税法の規定が違憲でないことは、同種の行為を有罪とした当裁判所大法廷判決(昭和二四年(れ)第一五〇三号昭和二五年二月一日言渡大法廷判決)に徴し明らかである。
あてはめ
外国人登録証明書の携帯義務は、外国人の居住関係及び身分関係を明確にするという行政上の取締目的を達成するためのものである。このような取締事項の本質に鑑みれば、同令13条にいう「携帯しない者」とは、故意に携帯しない者に限られず、不注意によって携帯を失念した過失による者も包含すると解するのが法意に合致する。したがって、故意の立証がなくとも過失があれば処罰が可能である。
結論
外国人登録証明書の不携帯罪は、過失による場合も処罰される。本件上告は棄却される。
実務上の射程
行政刑法において過失犯の処罰を認めた初期の判例である。現代の刑法理論(刑法38条1項)の下では、法律に特別の規定がある場合に限り過失犯が処罰されるため、本判決の法理をそのまま一般化することは慎重を要するが、行政上の義務履行を確保する趣旨の規定において「法律に特別の規定がある」との解釈を導く際の参考となり得る。
事件番号: 昭和26(あ)3990 / 裁判年月日: 昭和28年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の罪に対し、それぞれの罪について個別に刑を選択した結果、懲役刑と罰金刑を併科することは適法であり、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は三つの罪状について起訴された。第一審判決は、判示第一および第二の事実について懲役刑を選択し、判示第三の事実については罰金刑を選択した。その結果、主文に…
事件番号: 昭和27(あ)4304 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が諸般の事情を考慮して法定刑の範囲内で刑を科した以上、執行猶予を付さず実刑としたことや、犯情の類似した他者と処罰に差異があることは、憲法14条の法の下の平等に反しない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決において執行猶予の言渡しを受けず実刑に処されたこと、および罰金刑ではなく体刑に処されたこ…