外国人登録法第一八条第一項第一号により処罰される同法第一一条第一項の規定に違反し、登録原票の確認の申請をしない者とは、取締り事項の本質に鑑み、故意に右申請をしない者ばかりでなく、過失によつてこれをしない者をも包含する趣旨である。
外国人登録法第一八条第一項第一号、第一一条第一項の法意。
外国人登録法18条1項1号,外国人登録法11条1項
判旨
行政取締法規の違反行為において、取締事項の本質に鑑み、処罰規定に過失犯を包含する趣旨であると解される場合には、過失によって義務を怠った者も処罰の対象となる。
問題の所在(論点)
外国人登録法18条1項1号(当時)の罰則規定は、同法11条1項の義務に違反した者について、故意がある場合に限らず過失による場合も処罰する趣旨を含むか。
規範
刑法上の過失犯は、法律に特別の規定がある場合に限り罰せられる(刑法38条1項但書)。しかし、行政上の取締法規においては、その取締事項の本質及び法目的の実現の必要性に照らし、明文の規定がなくとも過失犯を包含する趣旨であると解される場合には、過失による違反行為も処罰対象となり得る。
重要事実
被告人は、外国人登録法11条1項に基づき義務付けられている登録原票の確認(切替)申請を所定の期間内に行わなかった。弁護人は、同法18条1項1号が処罰対象とする者は「故意に」申請をしない者に限られるべきであり、過失犯を包含すると解する原判決の法解釈は違憲であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、外国人登録法の取締事項の本質に照らして検討した。外国人登録制度は在留外国人の公正な管理を目的とする行政上の取締法規であり、その正確性を維持するための確認申請義務は極めて重要である。このような取締事項の本質に鑑みれば、同法18条1項1号は、故意に申請をしない者だけでなく、不注意により失念するなど過失によって申請をしない者をも包含する趣旨であると解するのが正当である。
結論
本件処罰規定は過失犯をも包含する趣旨であり、過失によって申請を怠った場合も同法違反罪が成立する。
実務上の射程
行政刑法における過失犯の処罰につき、明文の規定がない場合でも、法目的や取締事項の性質から過失犯を包含すると解釈する手法(いわゆる『過失犯処罰の黙示の規定』の法理)を示す判例である。ただし、現在の刑事法体系では刑法38条1項との整合性が厳格に求められるため、本判決の法理を無限定に広げることには慎重な検討を要する。
事件番号: 昭和37(あ)1081 / 裁判年月日: 昭和37年10月19日 / 結論: 棄却
外国人登録法第一一項第一項の規定は不法に本邦に入つた者にも適用されるものと解すべきであり、憲法第三八条第一項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第二七七七号同三一年一二月六日大法廷判決、刑集一〇巻一二号一七六九頁)の趣旨に徴し明らかである。