外国人登録法第一一項第一項の規定は不法に本邦に入つた者にも適用されるものと解すべきであり、憲法第三八条第一項に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第二七七七号同三一年一二月六日大法廷判決、刑集一〇巻一二号一七六九頁)の趣旨に徴し明らかである。
外国人登録法第一一条第一項の合憲性。
外国人登録法11条1項,憲法38条1項
判旨
不法入国した外国人であっても外国人登録法上の登録義務(11条1項等)を負い、その義務を課すことは自己負罪拒否特権(憲法38条1項)に違反しない。
問題の所在(論点)
不法入国した外国人に対して、外国人登録法上の登録義務を課し、その不履行を処罰することは、自己負罪拒否特権(憲法38条1項)に違反するか。
規範
行政上の目的から課される登録義務は、その不履行が刑罰によって強制される場合であっても、直ちに刑事責任の追及を目的とする自己負罪の強制には当たらない。不法入国という前段の犯罪事実を秘匿する権利を保障するために、行政上の取締規則の適用を免除すべき根拠はなく、このような義務賦課は憲法38条1項に違反しない。
重要事実
被告人は不法に本邦に入国した外国人であったが、外国人登録法11条1項に基づく登録原票への署名・指紋押捺等の義務(当時の規定)を履行しなかった。弁護人は、不法入国者が登録を強制されることは、自らの不法入国という犯罪事実を露呈させることに繋がり、自己負罪拒否特権を保障する憲法38条1項に反すると主張して上告した。
あてはめ
外国人登録法11条1項の規定は、適法に居住する外国人のみならず不法に入国した者にも等しく適用される。この登録制度は行政上の適正な管理を目的とするものであり、不法入国という特定の犯罪を自白させることを直接の目的とするものではない。したがって、たとえ登録の結果として不法入国の事実が判明する可能性があったとしても、それは行政上の義務履行に伴う反射的な結果に過ぎず、供述の強要には当たらないと解される。
結論
外国人登録法11条1項の規定は、不法入国者に適用されるとしても憲法38条1項に違反しない。
実務上の射程
行政上の報告・登録義務と自己負罪拒否特権の限界を示す射程を持つ。行政目的の合理性があり、かつ刑事追訴を直接の目的としていない場合には、事実上自己に不利益な情報を含んでいても義務賦課は合憲とされる。
事件番号: 昭和54(あ)1792 / 裁判年月日: 昭和55年7月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】外国人登録法3条1項に基づく登録申請義務は、不法入国した外国人に対しても適用される。この義務の履行は、自己の犯罪を供述することを強要するものとはいえず、憲法38条1項の自己負罪拒否特権に違反しない。 第1 事案の概要:不法に本邦に入国した外国人が、外国人登録法3条1項(当時)の定める登録申請義務を…