判旨
告訴の取消しがあったか否かは、事実認定の問題であり、第1審判決が採用せず原判決も判断していない事実は、適法な上告理由とはならない。また、検察官が告訴取消しの申出を受理しなかったとしても、それが直ちに憲法違反や刑事訴訟法違反を構成するものではない。
問題の所在(論点)
告訴の取消しがあった事実が認められない場合に、その事実を前提として刑事訴訟法237条2項違反を主張できるか。また、検察官が告訴取消しの申出を受理しないことが憲法19条や刑事訴訟法違反に該当するか。
規範
告訴の取消しの有無は証拠に基づく事実認定の問題であり、上告審においては、原判決が認定していない独自の事実を前提として法違反を主張することはできない。また、刑事訴訟法241条3項等の手続規定に照らし、検察官による告訴取消し事務の処理がなされないことが直ちに憲法19条等の違憲問題を生じさせるものではない。
重要事実
被告人が告訴の取下げがあったと主張したが、第1審判決は告訴の取下げがあったとする証人の証言を採用しなかった。さらに、原判決においてもこの点に関する判断はなされなかった。弁護人は、検察官が告訴取消しの申出を受理しなかったことが憲法19条(思想及び良心の自由)や刑事訴訟法243条、241条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、告訴が取り消された事実は原判決において認定されておらず、弁護人が援用する証言も第1審で不採用とされている。したがって、告訴取消しを前提とする法違反の主張は、前提を欠く独自の主張にすぎない。また、検察官が取消しの申出を処理しなかったとしても、それが憲法19条の保障する自由を侵害したり、刑事訴訟法上の告訴手続規定に違反したりするものとは認められない。
結論
告訴の取消しがあったとは認められず、検察官の対応に憲法・刑訴法違反の事由も存在しないため、上告は棄却される。
実務上の射程
告訴の取消しという訴訟条件の存否に関する事実認定を争う際の限界を示す。原審で認められていない事実を前提とした上告理由の制限、および検察官の事務手続と違憲性の峻別を理解する上で重要である。
事件番号: 昭和26(あ)1344 / 裁判年月日: 昭和26年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認、擬律錯誤、および第一審の裁量に属する審理の程度または範囲への非難は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決に対し、事実誤認およびそれを前提とする擬律錯誤を主張して上告した事案。併せて、第一審の審理の程度や範囲が不十分であるとして、裁判所の訴…