判旨
憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、刑罰の内容そのものが人道上酷悪と認められるものを指し、具体的な死刑の方法等は判例法理に照らして判断される。また、控訴審において刑訴法393条1項但書の疎明がない限り、証拠調べを行わないことに違法はない。
問題の所在(論点)
死刑等の刑罰が憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。また、控訴審において弁護人が申請した証拠調べを却下したことが、刑訴法393条1項に違反し、憲法違反を構成するか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴い、人道的見地から容認し得ない程度に過酷な刑罰を指す。また、刑事訴訟法393条1項但書による証拠調べの義務付けは、当該事実の存在が適法に疎明された場合に限られる。
重要事実
上告人は、原判決の量刑が不当であり、また原審が刑訴法393条1項但書に該当する事由があるにもかかわらず証拠調べを行わなかったことは訴訟法違反であり、憲法36条の「残虐な刑罰」に該当すると主張して上告した。
あてはめ
憲法36条の点について、判例(最大判昭23.6.23)によれば死刑そのものは残虐な刑罰に当たらない。本件の量刑不当等の主張は、実質的に単なる訴訟法違反の主張に留まる。また、刑訴法393条1項の点については、原審の公判調書上、同条項但書に該当する事由の疎明がなされた形跡がないため、原審が申請を却下したことに手続上の違法は認められない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらないため、棄却される。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の意義を確認する際の基礎となる。実務上は、控訴審での証拠調べの要否(393条1項)に関して、疎明の有無が判断の分水嶺となることを示す手続的先例として機能する。
事件番号: 昭和30(あ)83 / 裁判年月日: 昭和30年5月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を指し、被告人にとって過重な刑罰であるというだけではこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、裁判所が一定の量刑を言い渡したところ、弁護人が当該刑罰は憲法36条が禁じる「残虐な刑…
事件番号: 昭和25(あ)3111 / 裁判年月日: 昭和27年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審が法律の許容する範囲内で言い渡した通常の刑罰は、仮に被告人にとって過酷に感じられるものであったとしても、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、事実審の裁判官が法律で許された範囲内(法定刑の範囲内)において量刑を決定し、刑を言い渡した。これ…