判旨
法律が廃止された場合であっても、廃止法律に「施行前の行為に関する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定が設けられている限り、当該行為を処罰することは憲法及び刑罰法規の原則に反しない。
問題の所在(論点)
刑罰規定が法律によって廃止された場合において、廃止後の法律に「なお従前の例による」旨の経過規定があるとき、廃止前の行為を処罰することは許されるか。具体的には、いわゆる「限時法」や法改正に伴う経過措置の合憲性・有効性が問題となる。
規範
刑罰を定めた法律が廃止された場合においても、廃止法律の附則等に「この法律施行前にした行為に関する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定が置かれているときは、実体法上の罪刑の均衡や刑罰権の存続を根拠として、行為当時の法律に基づき処罰することが認められる。
重要事実
被告人は取引高税法違反の罪に問われたが、上告審係属中に当該法律が「取引高税法を廃止する法律(昭和24年法律第285号)」により廃止された。しかし、同廃止法律の附則には、施行前の行為に関する罰則の適用について従前の例による旨の経過規定が存在していた。弁護人は、法廃止後の処罰は憲法11条(基本的人権の享有)及び25条(生存権)等に違反し違法であると主張した。
あてはめ
本件において、取引高税法は昭和25年1月1日以降廃止されているものの、廃止法律の規定により、施行前の行為については従前の例によることが明示されている。このような経過規定は、法秩序の安定と処罰の公平を期する趣旨から設けられたものであり、正当な立法措置である。したがって、行為当時に適法に成立していた罰則規定を、廃止後の裁判において適用し処罰することは適法であると解される。
結論
経過規定により廃止前の罰則の適用が維持されている以上、被告人を処罰することは違法ではなく、憲法にも違反しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
法令の改廃に伴い処罰根拠が失われたと主張される事案(刑法6条の逆、あるいは刑訴法337条2号の適用の可否)において、経過措置の有無を確認し、その有効性を肯定する際の根拠として用いる。実務上、明確な経過規定があれば、限時法理論(事後的な法的評価の変更か否か)を論じるまでもなく処罰が維持されることを示す判例である。
事件番号: 昭和28(あ)5373 / 裁判年月日: 昭和30年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑罰規定が廃止された場合であっても、法律の附則に「この法律の施行前にした行為に関する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定があるときは、刑訴法337条2号の「刑の廃止」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人は、取引高税法(昭和23年法律第108号)違反の罪に問われていたが、同法…
事件番号: 昭和30(あ)3712 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
一 物品税または取引高税を逋脱する目的で、製造場から製品を移出販売しその代金を受領しながら、これについては所轄税務官吏には秘密の伝票帳簿を作成記入し、右官吏の検査に供すべき正規の帳簿に記入しないようなことをすれば、その行為は、物品税法(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)第一八条第一項にいう「不正ノ行為ニヨリ物…