判旨
刑罰規定が廃止された場合であっても、法律の附則に「この法律の施行前にした行為に関する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定があるときは、刑訴法337条2号の「刑の廃止」には該当しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法337条2号にいう「法律により刑が廃止されたとき」の意義。特に、罰則の適用を継続させる旨の経過規定を伴う法律の廃止がこれに含まれるか。
規範
刑罰規定を改廃する法律の附則において、施行前の行為に対しなお従前の罰則を適用する旨の経過規定が置かれている場合には、当該施行前の行為については実質的に罰則が維持されているものと解される。したがって、このような場合には刑事訴訟法337条2号にいう「確定判決を経た後法律により刑が廃止されたとき」には該当せず、免訴判決をすべき理由とはならない。
重要事実
被告人は、取引高税法(昭和23年法律第108号)違反の罪に問われていたが、同法は昭和24年12月27日に公布された法律により廃止された(昭和25年1月1日施行)。しかし、当該廃止法律の附則10項には「この法律の施行前にした行為に関する罰則の適用については、なお従前の例による」との経過規定が設けられていた。弁護人は、法の廃止を理由に刑訴法337条2号に該当し免訴とされるべきであるとして、原判決の判断(有罪)に違憲等の上告理由がある旨主張した。
あてはめ
本件における取引高税法は、後続の法律により廃止されている。しかし、その廃止法律の附則10項によれば、施行前に行われた違反行為については、引き続き旧法の罰則を適用することが明示されている。このような経過規定が存在する場合、当該行為に対する処罰根拠は法的に維持されていると評価できる。したがって、形式的な法の廃止があっても、刑訴法337条2号にいう刑の廃止という事態には至っていないと解される。
結論
経過規定により罰則の適用が維持されている場合、刑訴法337条2号の免訴事由には該当しない。したがって、被告人を有罪とした原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
法改正や廃止に伴う「刑の廃止」の成否を判断する際のリーディングケースである。答案上は、単に条文がなくなったことのみをもって免訴とするのではなく、必ず附則等の経過規定を確認し、実質的な処罰の要否を検討する際の手法として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)2974 / 裁判年月日: 昭和28年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律が廃止された場合であっても、附則において廃止前の行為に対する罰則の適用につき従前の例による旨の経過規定が置かれているときは、廃止前の違反行為を処罰することは憲法及び法令に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は取引高税法違反の罪に問われたが、同法は昭和25年1月1日をもって廃止された。しかし、…
事件番号: 昭和27(あ)4121 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の改正により罰則が廃止された場合であっても、改正前の行為については、別段の経過規定がない限り、刑法6条(刑の変更)の問題ではなく「刑の廃止」として免訴(刑訴法337条2号)となるべきかが問題となるが、本判決はこれを否定した先例を引用し、本件について刑の廃止には当たらないと判断した。 第1 事案…