一 密輸入貨物の表示に「内容不詳」の附記があるとしても、密輸幇助事件の公訴事実の記載として罪となるべき事実の特定につき何ら欠くるところはない。 二 内容不詳の密輸入貨物の原価をその三倍が三万円を超えないものと認めることは違法でない。
一 密輸入貨物の表示を「内容不詳」とした公訴事実の記載と事実の特定 二 内容不詳の密輸入貨物の原価の認定
刑訴法256条3項,関税法(昭和23年法律107号による改正のもの)76条1項但書
判旨
公訴事実に密輸入貨物の表示として「内容不詳」との附記があっても、密輸幇助事件の罪となるべき事実の特定に欠けるところはない。内容不詳であっても証拠により密輸入貨物であると認定できる限り、被告人の利益を考慮して罰金額を算定した上で有罪とすることは適法である。
問題の所在(論点)
公訴事実に密輸入貨物の内容を「内容不詳」と記載することが、刑事訴訟法256条3項にいう「罪となるべき事実」の特定として欠けるところがないか。
規範
公訴事実の特定(刑事訴訟法256条3項)においては、他の事実と識別できる程度に具体的であれば足り、貨物の内容が詳細に判明していない場合であっても、密輸入貨物であること自体の特定がなされていれば、被告人の防御権を不当に害するものとはいえない。
重要事実
被告人らは密輸入を幇助した罪で起訴されたが、公訴状における密輸入貨物の表示には「内容不詳の」という附記がなされていた。第一審および原審は、証拠に基づき当該貨物が密輸入貨物であることを認定した上で、罰金額の算定にあたって被告人の利益となるよう、貨物原価の3倍が3万円を超えないものとして処理し、有罪判決を下した。これに対し、被告人側は事実の特定に欠けるとして上告した。
事件番号: 昭和26(あ)2526 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
一 被告人が公判廷において知情の点を除いて幇助の事実を供述する等その防禦に実質的な不利益を及ぼす虞のない場合には、正犯の訴因の変更をさせないでこれを幇助に認定することができる。 二 物品の密輸入をしようとした貿易等臨時措置令違反の事実とその物品の関税の逋脱を図つた関税法違反の事実とは、その公訴事実を異にする。
あてはめ
本件では、密輸入貨物の内容が詳細に特定されておらず「内容不詳」との記載があるが、密輸幇助事件としての性質に鑑みれば、それが密輸入に係る貨物であることの同一性が示されている。また、裁判所は内容不詳ながらも証拠によって密輸入貨物性を認定しており、罰金算定においても原価不明であることを逆手に取り、被告人に最も有利な計算(3万円以下)を採用している。したがって、構成要件に該当する事実の審判対象としての特定は十分になされているといえる。
結論
公訴事実の特定に欠けるところはなく、本件公訴提起および原判決に違法はない。
実務上の射程
貨物の種類や名称が厳密に特定できない場合であっても、密輸等の事案では他の事実と区別できる程度の記載があれば特定として有効であるとする。検察官の立証の限界と被告人の防御のバランスにおいて、概括的な記載を許容する射程を有する。
事件番号: 昭和25(あ)1953 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】密輸入された物品を海岸から近傍の小屋へ搬入し、陸揚げ自体に協力して密輸入を容易ならしめる行為は、事後従犯ではなく密輸入罪の幇助罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、密輸入された物件を、海岸において自己所有の浜小屋に搬入した。この行為は、密輸入された物品の陸揚げ作業そのものに直接協力する形で行…
事件番号: 昭和26(れ)1337 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正犯が密輸出を企図していることを認識しながら、当該密輸出を容易にする物品の売買行為を行った場合、正犯の実行行為を容易ならしめたものとして、刑法62条1項の幇助犯が成立する。 第1 事案の概要:被告人Dは、共犯者Bらが商品を密輸出する計画を立てていることを察知していた。それにもかかわらず、DはBらに…
事件番号: 昭和24(れ)1946 / 裁判年月日: 昭和25年1月19日 / 結論: 棄却
一 原判決の認定した本件犯罪事實は、要するに、被告人A、同Bは、原審相被告人C、同D及び第一審相被告人Eと共謀の上相共に物資を石川縣a港から船積みして朝鮮に密輸出しようと企て、被告人Aにおいて、判示のごとく昭和二二年一一月中右目的に使用するため機帆船F丸を買い取り、その修理艤装を進め同年一二月中旬頃迄の間に燃料その他消…
事件番号: 昭和24(れ)285 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
しかし、貿易等臨時措置令第四條及び關税法の罰則等の特例に關する勅令第一條第二項は何れも輸出入しようとした行爲をを罰する旨を規定しているのであるから、原判示のように朝鮮向けの密航船を仕立てて、税關の兔許も受けず、その他法定の除外事由もないのに右密航船に指輪ライター等を多量に船積した第一審相被告人Aの所爲は前記兩勅令の規定…