判旨
法律において許された範囲内で事実審裁判所が量定した刑罰は、直ちに憲法36条にいう「残虐な刑罰」に該当することはない。
問題の所在(論点)
事実審が法律の範囲内で定めた量刑について、憲法36条にいう「残虐な刑罰」に該当するといえるか。
規範
事実審の裁判所が、法律において許された範囲(法定刑・処断刑の範囲内)において通常の刑罰を量定した場合には、その量刑が直ちに憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」に該当すると評価されることはない。
重要事実
被告人は第一審において懲役10月の実刑判決を受けた。これに対し被告人側は、量刑が不当に過重であると主張して控訴したが、原審(第二審)は訴訟記録に現れた諸事情を参酌しても重すぎるとは認められないとして控訴を棄却した。被告人は、実刑の判断が前刑の存在を考慮したものであり不当であること、および当該量刑が憲法36条の「残虐な刑罰」にあたることを理由として上告した。
あてはめ
本件において、原審は訴訟記録に現れた各般の事情を総合的に参酌しており、第一審が科した懲役10月の刑を不当に重いとは認められないと判断している。この量刑は、法律によって許された範囲内でなされた「普通の刑」の量定である。特定の事情(前刑の考慮)が不当に反映された事実は認められず、法定の範囲内で行われた適正な量刑判断であるといえる。したがって、憲法36条が禁止する非人道的な刑罰としての性質を備えているとは解されない。
結論
本件量刑は憲法36条に違反しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
量刑不当を憲法違反の問題(残虐な刑罰)にすり替える主張に対する排斥法理として機能する。法定刑の範囲内である限り、死刑制度そのものの是非などを除き、個別の量刑判断が36条違反とされることは実務上極めて困難であることを示している。
事件番号: 昭和27(あ)1535 / 裁判年月日: 昭和27年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が法律の定める刑の範囲内で量刑を行った場合、たとえ被告人にとって過重であったとしても、直ちに憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原判決の量刑が過重であることを理由に、これが憲法36条に違反する残虐な刑罰に当たる旨を主張して上告した。判決文からは、具体…
事件番号: 昭和25(あ)1221 / 裁判年月日: 昭和27年1月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、人道上残酷と認められる刑罰そのものを指し、法定刑の範囲内で量刑を定める裁判所の裁量判断の当否はこれに含まれない。 第1 事案の概要:被告人が特定の罪に問われ、一審・二審において有罪判決を受けた。弁護人は、裁判所が言い渡した刑の量刑が不当に重いことを理由に、それ…