刑訴施行法第三条の二が量刑不当を上告理由から除外したからといつて、憲法第三七条に違反しない。
刑訴施行第三条の二の合憲性
刑訴規則3条の2,刑訴法405条,憲法37条
判旨
憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織・構成をもつ裁判所を指し、また憲法36条の「残虐な刑罰」とは不必要な苦痛を伴う人道上残酷な刑を指すため、法定刑内の実刑判決や量刑の不当はこれらに違反しない。
問題の所在(論点)
1. 法定刑の範囲内での実刑判決(執行猶予の不付与)が、憲法37条1項の「公平な裁判所」の裁判を受ける権利を侵害するか。 2. 被告人にとって過重と感じられる量刑が、憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
1. 憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつ裁判所を意味し、個々の事件につきその内容実質が具体的に公正妥当な裁判であることを指すものではない。 2. 憲法36条の「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰を意味する。被告人にとって過重な刑であっても、直ちに残虐な刑には当たらず、法定刑内の量定の不当を指すものでもない。
重要事実
被告人は詐欺罪等に問われ、原審において法定刑の範囲内で実刑判決を受けた。これに対し被告人側は、執行猶予が付されなかったことは憲法37条1項の「公平な裁判を受ける権利」を奪うものであり、また量刑が重すぎることは憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当すると主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法37条1項の趣旨は、裁判所の構成・組織の中立性を担保することにある。本件において、原判決が被告人を執行猶予にせず実刑としたことは、裁判所の組織的な不公平を示すものではなく、個別の判断内容の妥当性にすぎないため、同条に違反しない。 2. 憲法36条の残虐な刑罰とは、火あぶりや拷問のような非人道的な刑種・執行方法を指す。本件の刑は法定刑の範囲内で行われており、単に被告人にとって過重であるという主観的評価や、量刑の不当という主張は、同条が禁止する人道上残酷な刑罰には該当しない。
結論
上告棄却。法定刑の範囲内での量刑判断や実刑判決は、憲法37条1項および憲法36条に違反しない。
実務上の射程
憲法36条・37条1項の定義を明確にした重要判例である。答案上は、量刑不当を理由に憲法違反を主張する場面での反論として、「公平な裁判所」の組織的側面や「残虐な刑罰」の人道的側面を強調する規範として引用する。量刑判断自体は原則として憲法問題にならないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和26(れ)478 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的または肉体的苦痛を伴い人道上残酷と認められる刑罰を指す。法定刑の選択や具体的量刑の不当は、直ちに同条にいう残虐な刑罰には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、原審が宣告した刑罰(量刑)について、弁護人が憲法36条の禁止する「残…
事件番号: 昭和27(あ)1535 / 裁判年月日: 昭和27年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が法律の定める刑の範囲内で量刑を行った場合、たとえ被告人にとって過重であったとしても、直ちに憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原判決の量刑が過重であることを理由に、これが憲法36条に違反する残虐な刑罰に当たる旨を主張して上告した。判決文からは、具体…