第一審判決が被告人の自白の補強証拠とした試験検定又は鑑定の目的となつた残存の合成清酒及びAが飲用し又は譲り受けた合成清酒が、仮りに所論のように第一審判決摘示の第一の(四)の事実によつて製造されたものであつたとしても、これら各証拠が右と同一方法によつて合成清酒を製造したという同第一の(一)乃至(三)の事実の補強証拠になり得ないとはいえない。
一の事実についての自白の補強証拠によつて他の事実についてなされた自白を補強することができるか
刑訴法318条,刑訴法319条2項,刑訴法165条
判旨
憲法38条3項及び刑訴法319条2項が要求する補強証拠は、被告人の自白が架空のものでないことを保障するに足りるものであれば足り、各犯行事実を個別に直接証明するものである必要はない。
問題の所在(論点)
被告人の自白の真実性を保障するための補強証拠として、直接的に当該犯行事実を証明するものではない客観的証拠や関連する事実の証拠を、どこまで許容できるか(補強証拠の範囲と程度)。
規範
自白に対する補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、当該自白が架空のものでなく、真実であることを保障するに足りるものであれば足りる。また、一つの事実に関する証拠であっても、関連する他の犯行事実の自白の真実性を保障する補強証拠となり得る。
重要事実
被告人は有毒飲食物等取締令違反等の罪に問われたが、第一審において複数の事実(第一の(一)乃至(四))について有罪とされた。被告人は自白のみで有罪とされた旨を主張して上告したが、証拠として試験成績書、酒類酒精分検定書、鑑定書、及び第三者の供述調書が存在していた。被告人は、一部の鑑定対象が現に製造された事実とは別の事実(第四の事実)に関連するものであるため、他の事実(第一乃至第三の事実)の補強証拠にはなり得ないと主張した。
あてはめ
本件では、B作成の試験成績書やC作成の酒類酒精分検定書、D作成の鑑定書等の客観的資料が存在する。これらの証拠は、仮に特定の事実(第一の(四))によって製造された物品に関するものであったとしても、一連の犯行に関する自白全体が架空でないことを保障するに足りる。したがって、これらの証拠は第一の(一)から(三)の事実についても補強証拠となり得るため、自白のみによる有罪認定には当たらない。
結論
自白の真実性を保障するに足りる証拠がある以上、自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項等には違反せず、有罪判決は維持される。
実務上の射程
補強証拠の程度について「実質説(真実性保障説)」に立つことを再確認する判例。答案上では、個別の構成要件要素を直接立証する証拠が不足していても、自白が架空でないことを裏付ける客観的証拠があれば補強法則を充足すると論じる際に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)79 / 裁判年月日: 昭和28年6月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみに基づいて有罪とすることは憲法38条3項及び刑訴法319条2項により禁止されるが、第一審判決が挙げた他の証拠を補強証拠として用いている場合には、自白のみによる有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が自白のみによって有罪とされたとして、憲法違反を理由に上告した事案である。…