原審における所論公判調書中検事の意見陳述の記載につき印刷文字を用いていることは所論のとおりであるが、右は検事が同旨の意見陳述をしたればこそ、かかる印刷文字の記載のある用紙を利用して、公判調書の作成を簡略にした趣旨であることは一見して明瞭であつて、到底所論の如く、原裁判所が控訴趣意の理由なきことを予断して公判に臨んだものと認めるを得ない。
公判調書に予め不動文字を印刷した用紙を利用することと憲法第三七条
憲法37条,刑訴法48条,刑訴法389条
判旨
公判調書の作成において、検事の意見陳述の記載に印刷文字の用紙を利用することは、事務の簡略化を目的としたものであり、直ちに裁判所の予断を推認させるものではない。
問題の所在(論点)
公判調書における検事の意見陳述の記載に印刷文字を用いることが、裁判所の予断を示す不適法な手続に該当するか(刑事訴訟法405条の適法性)。
規範
公判手続において、裁判所が特定の当事者の意見をあらかじめ採用することを予断しているか否かは、調書の作成形式のみならず、その作成の趣旨や経緯に照らして判断されるべきである。単なる事務作業の簡略化を目的とした形式の利用は、裁判の公正を害する予断があるとはいえない。
重要事実
刑事被告人の控訴審において、検事が意見陳述を行った際の公判調書の記載が、手書きではなくあらかじめ印刷された文字を用いた用紙で作成されていた。被告人側は、このような印刷済みの用紙を用意していたことは、裁判所が公判前から控訴趣意には理由がないと予断を持っていたことを示すものであり、憲法および刑事訴訟法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において公判調書に印刷文字が用いられたのは、検事が実際にその内容と同旨の意見陳述を行ったことに基づき、調書作成の事務を簡略化するためにあらかじめ用意された用紙を利用したに過ぎない。このことは一見して明瞭であり、裁判所が控訴理由を排斥することをあらかじめ予断して公判に臨んだと認めるに足りる客観的事実はない。したがって、弁護人の主張は前提を欠くものである。
結論
公判調書の記載形式をもって裁判所の予断を認定することはできず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判事務の効率化(プレプリント用紙の利用等)が直ちに手続の不公正や予断を意味しないことを示した事例である。答案上は、裁判の公平性や予断排除原則が争点となる場面で、事務的便宜と実質的な予断の区別を論じる際の補強材料として機能する。
事件番号: 昭和27(あ)6853 / 裁判年月日: 昭和29年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状に記載された表現が一定の趣旨であると合理的に解釈できる場合、その解釈に従って認定された事実は、訴因以外の事実について審理したものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人が関税法違反等で起訴された際、起訴状には「右物品を陸揚と共に税関の免許を受けないで神戸市内に搬入し」との記載があった。第一審…