判旨
執行猶予を言い渡すべきか否かの判断において、原判決言渡し後に前科に係る執行猶予期間が満了した事実は、刑法上の判断に何ら影響を及ぼさない。前犯の執行猶予期間中に再犯に及んだ事実がある以上、実刑を維持した原判決に職権破棄事由はない。
問題の所在(論点)
刑法25条に基づく執行猶予の可否を判断するに際し、原判決言渡し後に別件の執行猶予期間が満了したという事実が、判決に影響を及ぼす事情(刑事訴訟法411条の破棄事由)となるか。
規範
裁判所が係属事件について執行猶予を言い渡すべきか否かを判断するにあたり、原判決言渡し後に前犯罪について言い渡されていた執行猶予の期間が満了したか否かは、刑法上の判断において何ら関係を有するものではない。
重要事実
被告人は前科につき執行猶予の言渡しを受けていたが、その猶予期間中に本件犯罪を敢行した。第一審判決に対し控訴したが、原審(控訴審)は執行猶予を付さなかった。その後、原判決言渡し後に前科の執行猶予期間が満了したことを理由に、上告人は執行猶予を付すべきであると主張して上告した。
あてはめ
被告人は前犯につき執行猶予の恩典を受けながら、その猶予期間中に本件犯罪を敢えてしたものである。このような事情に照らせば、原審が実刑を選択したことは相当として首肯できる。原判決後に前科の猶予期間が経過したとしても、それは過去の犯罪事実や犯情を左右するものではなく、刑法上の判断に影響しない。したがって、刑事訴訟法411条を適用して原判決を破棄すべき事由は認められない。
結論
原判決後に前科の執行猶予期間が満了しても、それは執行猶予の適否に影響を与えないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑判断の基準時に関する判断であり、上訴審での情状変更(猶予期間の満了)が当然には判決の破棄事由にならないことを示している。実務上、再犯が前科の猶予期間内に行われたという非難に値する事実は、事後的な期間経過によって消滅しないことを強調する際に活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1652 / 裁判年月日: 昭和31年7月27日 / 結論: 棄却
被告人が前に執行猶予の判決言渡を受けたことがあつても、新たに審判すべき犯行が前の判決により認められた罪の余罪であつて、事実審裁判所がこれを同時に審判すれば一括して執行猶予を言い渡し得たであろう情状があると思料したときは、刑法二五条二項が新設された後においても同条一項によつて刑の執行猶予を言い渡すことができることは、昭和…