判旨
刑の執行を猶予するか否かは、事実審たる原裁判所の裁量権に委ねられている事柄であり、被告人に有利な事情があるとしても、執行猶予を言い渡さないことが直ちに違法となるものではない。
問題の所在(論点)
刑の執行猶予を言い渡すか否かの判断について、事実審である原裁判所にどの程度の裁量権が認められるか、および、被告人に有利な事情がある場合に執行猶予を付さないことが違法となるか。
規範
刑の執行猶予(刑法25条)の適用の可否は、事実審たる裁判所の広範な裁量権に属する。したがって、裁量の範囲を著しく逸脱または濫用したと認められない限り、執行猶予を付さなかった判断が違法とされることはない。
重要事実
被告人が刑の執行猶予を求めて上告した事案。上告人は、被告人にとって有利な諸事情(詳細は判決文からは不明)が存することを理由に、第一審または原審が執行猶予を言い渡さなかったことは不当であり、違法であると主張した。
あてはめ
本件において、上告人は被告人に有利な諸事情を縷述しているが、執行猶予の判断は原裁判所の裁量権に委ねられている。原審がそれらの事情を考慮した上でなお執行猶予を付さない判断をしたとしても、それは裁量権の範囲内にある。したがって、量刑の不当を理由とする主張は、適法な上告理由には当たらないと解される。
結論
刑の執行猶予の判断は事実審の裁量に委ねられており、執行猶予を言い渡さなかった原判決に違法はない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑不当は原則として上告理由とならない(刑訴法405条等)ことを補強する判例であり、執行猶予の判断が裁判所の広範な裁量に属することを確認する際に用いる。答案上は、裁量権の逸脱・濫用の有無という枠組みで論じる際の前提として機能する。
事件番号: 昭和26(あ)3266 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
第一審裁判所が禁錮以上の刑に処せられてその執行を終つた日から七年を経過しない者に対し、誤つて懲役刑に執行猶予を付したが、控訴中に七年を経過した場合、控訴裁判所が第一審判決を破棄した上、更めて実刑を科することは違法ではない。