原判決は第一審判決の量刑を不当としてこれを破棄し、刑訴第四〇〇条但書により直ちに判決をすることができるものとして、第一審判決の認定した事実に法律を適用し、被告人を死刑に処したものであつて、かかる場合原判決は第一審判決の判示事実並びに証拠を引用したものと解することができる。
量刑を不当として第一審判決を破棄し自判する場合と原判決の事実摘示並びに証拠説明
刑訴法381条,刑訴法400条但書,刑訴法335条1項
判旨
死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」に当たらない。また、公訴事実と一部異なる事実認定や、立証趣旨が明示された証人尋問手続に違法はない。
問題の所在(論点)
1. 死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たり違憲か。2. 裁判所が公訴事実と一部異なる品目・数量を認定すること、および立証趣旨が示された証人尋問に予知手続を欠くことは適法か。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、その刑罰の性質自体が人道に反する程度の残酷さを有するものを指すが、死刑制度そのものはこれに該当しない(昭和23年3月12日大法廷判決参照)。また、裁判所は公訴事実の同一性を損なわない範囲で、証拠に基づき細部について異なる事実を認定することが許される。証人尋問手続においては、公判廷で立証趣旨及び尋問内容が述べられていれば、公判廷外での尋問事項予知手続の欠如は直ちに違法とはならない。
重要事実
被告人は窃盗等の罪で起訴され、第一審で判決を受けた。控訴審(原審)は第一審判決の量刑を不当として破棄し、自ら死刑を言い渡した。その際、原審は第一審の判示事実や証拠を引用し、かつ窃盗の目的物の品目・数量について公訴事実と一部異なる認定を行った。また、弁護人は原審における証人尋問の手続(尋問事項の予知手続)に不備があったとして、これらの一連の手続および死刑判決が憲法および刑訴法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
死刑の合憲性については、先行する大法廷判決の判例に従い、憲法36条に違反しない。事実認定については、窃盗の目的物の品目や数量という細部において公訴事実と異なる認定がなされたとしても、直ちに違法とはいえない。手続面では、検察官が被告人・弁護人の出頭する公判廷で証人を申請する際に立証趣旨や尋問内容を述べている以上、公判廷外での尋問事項予知手続がなされなかったとしても、防御権の実質的な侵害はなく違法ではない。したがって、これらを前提とする憲法違反の主張は理由がない。
結論
本件死刑判決およびその訴訟手続に違憲・違法な点は認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑の合憲性に関する基本的判例。刑事実務上は、訴因の特定の程度(細部の差異は許容される点)や、証人尋問手続における立証趣旨の告知による不備の治癒に関する解釈として参照されるが、本判決自体は簡潔な説示に留まるため、具体的論証ではより詳細な昭和23年大法廷判決等を併せて参照すべきである。
事件番号: 昭和25(あ)2746 / 裁判年月日: 昭和26年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認の主張は刑訴法405条の上告事由に当たらないこと、及び原審が証拠を適正に審理した結果を争うことは憲法32条違反の問題にはならないことを示した。 第1 事案の概要:被告人が共犯関係について争ったところ、原審は第一審の記録および証拠を審理した結果、被告人の主張を排斥した。これに対し、被告人側は…
事件番号: 昭和45(あ)293 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、強盗殺人罪等の重大な犯罪に対して死刑を科すことは、諸般の情状を考慮した上でやむを得ない場合には憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑の判決を受けた。弁護人は、死刑制度そ…