判旨
犯罪後の法律により刑が変更された場合、刑法6条に基づき新旧両法の刑を比較して最も軽いものを適用すべきであるが、処罰規定自体の存否等ではなく罰金額の算定基準のみが変更された場合には、その変更された範囲で新旧比照を行うべきである。
問題の所在(論点)
犯罪後に罰金等臨時措置法が施行され、罰金刑の最低額に変更があった場合、刑法6条に基づく新旧法の比較をどのように行うべきか。また、処罰規定自体に変更がない場合に、刑法6条の適用範囲をどのように解すべきかが問題となる。
規範
刑法6条は、犯罪後の法律により刑が変更されたときは、その新旧両法の刑を比較して、そのうち最も軽い刑を適用すべき旨を定めている。これは、行為時法の処罰を原則としつつ、その後の立法政策により刑が軽減された場合には、被告人に有利な新法を適用するという趣旨である。したがって、罰金刑の寡額(最低額)に変更があった場合には、当該変更後の刑を対象として新旧比照を行う必要がある。
重要事実
被告人は、旧麻薬取締規則の施行当時、自己の麻薬中毒症状緩和の目的で麻薬を施用した。原判決は、行為時法である同規則及び麻薬取締法74条(従前行為処罰の規定)を適用した。しかし、犯行後に「罰金等臨時措置法」が施行されたことにより、所定の罰金刑の寡額(最低額)に変更が生じていた。このため、原判決は罰金刑の額についてのみ刑法6条による新旧比照を行っていた。
あてはめ
本件において、原判決は麻薬を施用した事実に対し、行為時法である麻薬取締規則等の処罰規定をそのまま適用している。これは、処罰の根拠となる構成要件自体に変更がないためである。一方で、罰金刑の額については罰金等臨時措置法の施行により変更が生じている。判決文によれば、原判決はこの「罰金刑の寡額に変更があった関係」においてのみ刑法6条を適用しており、規定全体の変更としてではなく、変更が生じた刑の軽重という実質的な不利益の有無に着目して判断している。このような運用は、被告人の不利益を回避する刑法6条の趣旨に合致しており、妥当であると解される。
結論
罰金刑の最低額が変更された場合、その変更後の刑を対象として刑法6条による新旧比照を行うべきである。原判決が、処罰規定全体ではなく罰金刑の額についてのみ新旧比照を行ったことに違法はない。
実務上の射程
本判決は、刑法6条の「刑の変更」が、罰金等臨時措置法のような形式的な金額の修正に及ぶことを示唆している。司法試験においては、法令の改廃により処罰規定自体が消滅したのか(刑訴法337条2号の免訴)、それとも刑の軽重のみが変更されたのか(刑法6条)を区別する際の基礎的な理解として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2551 / 裁判年月日: 昭和25年3月24日 / 結論: 棄却
麻藥取締法附則第七四條は同法第六五條に掲げる法令廢止前の行爲に對する罰則の適用については、刑の廢止變更があつても、刑法第六條に舊刑訴法第三六三條第二號の適用を排除して常に行爲時法の規定によるべきことを規定した趣旨である。