麻藥取締法附則第七四條は同法第六五條に掲げる法令廢止前の行爲に對する罰則の適用については、刑の廢止變更があつても、刑法第六條に舊刑訴法第三六三條第二號の適用を排除して常に行爲時法の規定によるべきことを規定した趣旨である。
麻藥取締法附則第七條の法意と刑法第六條の適用の有無
麻藥取締法附則74條,麻藥取締法附則65條,刑法6條,舊刑訴法363條2號
判旨
犯行時と裁判時の間に法令の改廃により刑の変更があった場合、原則として刑法6条により新旧法の比照を要するが、新法に「旧法の廃止後もなおその効力を有する」旨の経過規定があるときは、同条の適用が排除され行為時法が適用される。
問題の所在(論点)
犯行時と裁判時の間に法令の改廃があり、刑の変更が生じた場合において、新法附則に「旧法の罰則の適用についてはなお効力を有する」との経過規定があるときに、刑法6条の規定(軽法優先)が適用されるか。
規範
法令の改廃により刑の変更があった場合、別段の経過規定がない限り、刑法6条に基づき新旧法の刑を比照して、最も軽いものを適用しなければならない。しかし、新法の附則において「旧法令廃止前にした行為に対する罰則の適用については、その廃止後もなお効力を有する」旨が規定されている場合、かかる経過規定は、刑の廃止・変更の有無にかかわらず、刑法6条の適用を排除して常に行為時法によるべき趣旨であると解される。
重要事実
被告人は、麻薬取締規則等が施行されていた時期に麻薬に関する犯罪行為を行った。その後、昭和23年に旧規則等を廃止する「麻薬取締法」が公布・施行された。新法附則74条には「廃止前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による(旧法が効力を有する)」旨の経過規定が置かれていた。原審は、刑法6条に基づく新旧法の刑の比照を行わず、行為時法である旧法を適用して処断したため、被告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件において、麻薬取締法附則74条は、旧法令廃止前の行為に対する罰則適用について「廃止後もなおその効力を有する」と明記している。この規定は、法令の改廃に伴う刑の変更があったとしても、刑法6条による比較衡量の手続きを排除し、一律に行為時法を適用することを命じたものである。したがって、裁判時に新法が施行されていても、本件の犯行に対しては行為時法である旧麻薬取締規則等を適用すべきであり、刑法6条を適用しなかった原審の判断に誤りはない。
結論
新法に旧法の効力を存続させる経過規定がある場合、刑法6条の適用は排除され、行為時法である旧法が適用される。
実務上の射程
刑法6条の「法律により刑の変更があったとき」の原則(軽法優先)に対する、特別法による例外(経過規定による行為時法主義の維持)を認めた射程の長い判例である。答案上は、法令改廃があった場合にまず刑法6条の原則を指摘しつつ、当該法令の附則を確認し、本判例と同様の経過規定があれば、比照することなく行為時法を適用する論拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)2187 / 裁判年月日: 昭和28年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑が変更された場合、刑法6条に基づき新旧両法の刑を比較して最も軽いものを適用すべきであるが、処罰規定自体の存否等ではなく罰金額の算定基準のみが変更された場合には、その変更された範囲で新旧比照を行うべきである。 第1 事案の概要:被告人は、旧麻薬取締規則の施行当時、自己の麻薬中毒症…
事件番号: 昭和31(あ)2627 / 裁判年月日: 昭和34年12月22日 / 結論: 棄却
被告人の原判示覚せい剤譲り受けの行為については、それぞれ行為時法に従つて法律上の処遇を判断すべきものではあるが、かかる解釈に基き擬律をすると、同被告人の右昭和二九年法律第一七七号の施行前の覚せい剤各譲り受けと同法施行後の常習および営利の覚せい剤譲り受けとは併合罪として重い後者の刑に併合加重をしなければならないことになつ…
事件番号: 昭和25(れ)1298 / 裁判年月日: 昭和25年11月21日 / 結論: 棄却
一 昭和二〇年勅令第五四二号が旧憲法第八条の緊急勅令として法律と同一の効力を有したこと、且つそれが後に国会の承諾を得て引続き今日に至るまで有効に存続してあるものであることは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第二七九号同二三年六月二三日大法廷判決)の示す通りである。従つてその委任に基いて制定せられた麻薬取締規則が有効であ…