所論は厚生省令たる麻薬取締規則に罰則を定めたことは違憲であると主張するが、同規則は昭和二〇年勅令第五四二号「ポツダム宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件」に基いて厚生省令をもつて制定され、必要な罰則を設けられたものであつて、しかも同勅令が日本国憲法にかかわりなく憲法外において法的効力を有するものであることは当裁判所判例(昭和二四年(れ)第六八五号同二八年四月八日大法廷判決)の示すところであるから、同規則の罰則はもとより有効であり、違憲の論旨は前提を欠き理由がない。
昭和二〇年勅令第五四二号に基き制定された麻薬取締規則と憲法第三一条
憲法31条,麻薬取締規則(昭和21厚生省令25号)
判旨
法律の廃止に伴う経過措置により旧規定を適用すべき場合であっても、その後に罰金等臨時措置法による罰金額の変更があったときは、刑法6条が適用され、新旧両規定のうち最も軽い刑をもって処断すべきである。
問題の所在(論点)
法律の廃止に伴う経過措置により旧規定を適用すべきとされる場合に、その後の一般法(罰金等臨時措置法)による刑の変更について刑法6条(時に関する刑法の適用)を適用できるか。
規範
特定の命令(本件では麻薬取締規則)が廃止され、法附則の経過措置により「なお従前の例による(旧規定を適用する)」とされる場合であっても、行為後の他法令(罰金等臨時措置法等)によって罰金額に変更が生じたときは、刑法6条(刑の変更)の適用は除外されない。したがって、行為時と裁判時の刑を比較し、軽微な方の刑を適用しなければならない。
重要事実
被告人は、麻薬取締規則(厚生省令)が廃止される前に同規則に違反する行為を行った。同規則廃止後に施行された麻薬取締法附則74条は、廃止前の違反行為についてなお旧規則を適用する旨を定めていた。一方で、当該行為の後に「罰金等臨時措置法」が施行または改正され、罰金額に実質的な変更が生じていた。第一審および控訴審は、旧規則の罰則を適用しつつ、罰金額の変更については刑法6条を適用して処断したため、弁護人がこれを不服として上告した。
あてはめ
麻薬取締法附則に基づき、旧規則廃止前の行為に対して旧規則を適用することは、新法(麻薬取締法)の罰則との間で刑法6条を適用する余地をなくすものである。しかし、これとは別に、行為後の罰金等臨時措置法によって罰金額に変更があった事態は、まさに刑の変更に該当する。この場合、経過措置の存在にかかわらず刑法6条の適用は排除されないと解するのが相当である。原判決が、旧規則を適用しつつも、罰金等臨時措置法による変更につき刑法6条を適用して軽重を比較し、処断したことは正当である。
結論
経過措置により旧規定が適用される場合であっても、その後の罰金額の変更については刑法6条が適用される。
実務上の射程
法令の改廃に伴う経過規定(「なお従前の例による」等)がある場合でも、それとは無関係な一般法による罰金等の定額化・引き上げ等が生じた場合には、刑法6条に基づき被告人に有利な刑を選択すべきであることを示す。罪刑法定主義(不遡及の原則の例外としての軽法遡及)の観点から、時に関する適用関係を整理する際に有用である。
事件番号: 昭和26(あ)2187 / 裁判年月日: 昭和28年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑が変更された場合、刑法6条に基づき新旧両法の刑を比較して最も軽いものを適用すべきであるが、処罰規定自体の存否等ではなく罰金額の算定基準のみが変更された場合には、その変更された範囲で新旧比照を行うべきである。 第1 事案の概要:被告人は、旧麻薬取締規則の施行当時、自己の麻薬中毒症…