判旨
上告趣意書において具体的な不服の内容を示さず、単に過去に提出した控訴趣意書を引用するのみの記載は、適法な上告趣意の主張とはいえない。
問題の所在(論点)
上告趣意書自体に具体的な不服の内容を記載せず、単に控訴趣意書を引用する手法をとった場合、刑訴法上の適法な上告趣意の主張といえるか。
規範
刑事訴訟法上の上告趣意書には、上告の理由となる具体的な不服の内容を自ら示さなければならず、単に他の書面を引用するのみでその趣旨内容を具体的に示さないものは、適法な上告趣意の主張としての効力を有しない。
重要事実
弁護人が提出した上告趣意書において、記録に添付されている昭和25年9月30日付の控訴趣意書を引用する旨のみが記載されていた。また、別途「控訴趣意書」と題する書面も提出されたが、これは上告趣意書の提出期間が経過した後に提出されたものであった。
あてはめ
本件の上告趣意書は、それ自体の中に上告の趣旨や内容を全く示しておらず、過去の控訴趣意書を引用するにとどまっている。また、期間経過後に提出された書面は適法な期間内の主張として評価できない。したがって、上告趣意書としての体裁及び実質を備えていないといえる。
結論
本件の上告趣意書は適法なものとは認められず、刑訴法414条、386条1項2号により上告は棄却される。
実務上の射程
上告趣意書の記載要件の厳格性を示す。答案上は、上告理由の特定の程度や、上告趣意書提出期間の遵守の重要性を論じる際の根拠として活用できる。特に引用による主張の不適法性を指摘する局面で有用である。
事件番号: 昭和26(れ)1083 / 裁判年月日: 昭和26年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない場合、及び同法411条を適用して職権で判決を破棄すべき顕著な事由が認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立て、弁護人が上告趣意書を提出した事案。判決文の記載からは具体的な犯罪事実は不明であるが、記録を精査した結果…