覚書該当者の政治上の活動は前記法令の禁ずるところであつて、たとえ覚書該当者指定手続に錯誤があり、またはその後その指定が解除されても、一旦覚書該当者として法禁を犯した事実に対しては処罰を免れないのである。
覚書該当者の指定手続に錯誤があり又は指定が解かれても既に成立した公職追放令違反の罪の処罰は免れない
昭和22年勅令1号15条1項
判旨
公職に関する就職禁止等に関する勅令(昭和22年勅令第1号)に基づく覚書該当者の指定手続の是非について、裁判所は裁判権を有しない。また、一旦指定された者が禁じられた政治活動を行った以上、指定に錯誤があってもその処罰を免れない。
問題の所在(論点)
1. 覚書該当者の指定手続の妥当性について、日本の裁判所が審査権(裁判権)を有するか。2. 指定手続に錯誤がある場合、または後に指定が解除された場合であっても、指定期間中の政治活動の禁止違反について刑事責任を問いうるか。
規範
GHQの指令に基づく覚書該当者の指定手続は、高度に政治的な性質を有し、日本の裁判所の裁判権が及ばない統治行為的性格を持つ。また、当該法令に基づく禁止規定は、指定が有効に存続する限り適用され、事後的な指定解除や指定時の錯誤は、既に成立した違反行為の処罰に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人は、昭和22年勅令第1号に基づき公職追放の対象となる「覚書該当者」として指定された。しかし、被告人はこの指定が不当であると主張し、指定期間中に当該法令が禁じる「政治上の活動」を行った。被告人は、指定手続に誤りがあることや、信条による不平等な取り扱い(憲法違反)を理由に、自らの行為が処罰されるべきではないとして上告した。
事件番号: 昭和26(あ)2230 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和22年勅令第1号15条にいう「政治上の活動」は、目的犯のように政治的目的ないし政治的意図を要件とするものではない。政府等の施策活動に関する論議であり、現実の政治に影響を与える行動であれば、主観的な目的の有無にかかわらず同条の活動に該当する。 第1 事案の概要:被告人が行った論議が、昭和22年勅…
あてはめ
1. 覚書該当者の指定手続は、連合国最高司令官の指令に基づく特殊な行政処分であり、先行判例に照らせば裁判権の対象外である。したがって、手続の誤りを主張する論旨は判断の限りではない。2. 被告人が覚書該当者として指定されていた事実は動かない。法令が覚書該当者の政治活動を禁じている以上、たとえ指定手続に錯誤があろうとも、あるいは事後に解除されようとも、指定存在下で行われた法禁抵触行為の違法性は阻却されない。3. 記録上、被告人が信条によって不平等な扱いを受けた事実は認められず、憲法14条違反等の主張も根拠がない。
結論
被告人の上告を棄却する。覚書該当者として指定されている間に行った政治活動については、指定手続の是非にかかわらず、処罰を免れることはできない。
実務上の射程
本判決は、占領下の特殊な行政処分(公職追放)に関するものであるが、広義には「統治行為論」や「公定力・行政処分の刑事裁判への拘束力」に関連する。特に、行政処分の違法性が刑事罰の成否に影響しない(または裁判所が判断できない)局面を示す事例として、歴史的・理論的な射程を有する。
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和24(れ)553 / 裁判年月日: 昭和24年5月24日 / 結論: 棄却
一 所論の公職に關する就職禁止、退官退職等に關する改正勅令第一五條第一項は、候補者の届出又は推薦届出に關する連署行爲自体を候補者の推薦届出と同様に取扱い、これを政治上活動に含めたことは、同條の文理解釋上明かである。しかも、同條の規定の趣旨は覺書該當者自身の政治上の活動行爲を禁止するにあるのであるから、いやしくも覺書該當…
事件番号: 昭和24新(れ)1 / 裁判年月日: 昭和25年2月15日 / 結論: 棄却
一 上告人の住所が内閣總理大臣にとり知り得る状況にあつたにかかわらず上告人に通知しなかつたことは、追放令の假指定手續が追放に關する法令の規定する要件を完備していないことになるとの論旨第二點は判例(昭和二三年(れ)第一八六二號同二四年六月一三日大法廷判決參照)にいわゆる追放該當者として指定されたことが無効であるとの主張に…
事件番号: 昭和25(あ)1064 / 裁判年月日: 昭和25年6月29日 / 結論: 棄却
所論は要するに本件第一事實の被告人の所爲は、判示縣選舉管理委員會の吏員に對し書類の形式上の取扱いについて注意を喚起したに過ぎないものであるという獨自の事實主張の下に昭和二二年勅令が第一號第一五條第一項の政治活動に當らないとするものである。しかるに原判決の認定した被告人の所爲は單にかゝる吏員に對し所論注意を喚起したにすぎ…