一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときのように多數の該當者の住所を一々確かめて通知を發する遑のなかつた場合は、住所を知ることができない場合にあたり、從つて官報に掲載してこれを行うことができるものと認めて、そうしたのである以上、日本の裁判所がこれを審判しても無効とすることはできない。 三 ここにいう「政治上の活動」とは、原則として政府、地方公共團體、政黨その他の政治團體又は公職に在る者の政治上の主義、綱領、施策又は活動の企畫、決定に參與し、これを推進し支持し若しくはこれに反對し、あるいは公職の候補者を推薦し支持し若しくはこれに反對しあるいは日本國と諸國との關係に關し論議すること等によつて、現實の政治に影響を與えると認められるような行動をすることを云うものと解するを相當とする。そして、その中公職に在る者に對する關係は第一二條に定める部分は同條により、その他の部分はここにいう政治上の活動として第一五條第一項により、禁止されているものと解すべきである。 四 覺書該當者は、現在においては「政治上の活動」を禁止されているが經濟上又は社會上の活動は、往々にして政治上の活動と結びつき重なり合つてその間嚴格に區別を立て難い場合があることは勿論であるが、純然たる經濟上又は社會上の活動及び環境と事情に照らし經濟上又は社會上の活動と認められる行動は禁止の對象となつていないものと云うべきである。 五 論旨は、昭和二二年勅令第一號第七條の三第四項に於ける「みなす」という規定を以て人權を蹂躙するものとして非難しているが同條によれば、假指定を受けた者は三〇日以内に異議の申立をすることを許され、異議の申立についてはこれを正式に審査した上覺書該當の指定又は非該當の確認をするが、異議の申立をしない場合には、三一日目において本指定を受けたものとみなす。即ちその以後法律上は本指定を受けた者と同様の取扱を受けるというのであるから、所論のような不當な點はない。 六 裁判官が連合国側の正当な要求に従うべきことは、ポツダム宣言の受諾にもとずく当然の法的要請である。 七 ある雜誌を主宰するということは、その地位の名儀如何に拘わらず實質上はその雜誌を發行する雜誌社の役職員たる義務に從事することであるから、原判決が被告人を雜誌社の役職員に就いたものと認定したことは相當である。
一 覺書該當者としても假指定の効力と日本裁判所の審判權の有無 二 昭和二二年閣令、内務省令第一號第五條第一項の「本人に通知」する遑がなく官報に掲載した場合その通知の効力につき日本の裁判所の審判權の有無 三 覺書該當者の「政治上の活動」の意義と昭和二二年勅令第一號第一二條第一五條第一項 四 覺書該當者の政治上の活動と經濟上又は社會上の活動の區別 五 昭和二二年勅令第一號第七條の三第四項の「みなす」の規定と人權蹂躙 六 連合国側の正当な要求と裁判官に対する法的要請 七 雜誌の主宰者である被告人を雜誌社の役職員に就いたものと認定したことの正否
昭和22年勅令1號,昭和22年勅令1號12條,昭和22年勅令15條1項,昭和22年勅令7條3,昭和22年勅令1號14條,昭和22年閣令内務省令1號5條1項,昭和20年勅令542号(「ポツダム宣言ノ受諾ニ伴イ発スル命令ニ関スル件)
判旨
昭和22年勅令第1号(追放令)15条にいう「政治上の活動」とは、原則として政府、政党、公職者等の政治上の主義、綱領、施策等に関与し、これを推進、支持、又は反対すること等によって、現実の政治に影響を与えると認められるような行動を指し、その認定には言動の内容のみならず、周囲の環境や事情を総合的に斟酌すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)2230 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和22年勅令第1号15条にいう「政治上の活動」は、目的犯のように政治的目的ないし政治的意図を要件とするものではない。政府等の施策活動に関する論議であり、現実の政治に影響を与える行動であれば、主観的な目的の有無にかかわらず同条の活動に該当する。 第1 事案の概要:被告人が行った論議が、昭和22年勅…
問題の所在(論点)
追放令15条1項が覚書該当者に禁止する「政治上の活動」の意義、および表現行為や政党内での意見陳述がこれに該当するか。
規範
「政治上の活動」の意義は、各法令の立法趣旨と目的を考察して明らかにすべきである。追放令における同用語は、必ずしも政治的目的や意図(目的犯的要素)を要件とするものではないが、原則として、政府、地方公共団体、政党、公職者等の政治上の主義、綱領、施策、活動の企画・決定に参与し、これを推進、支持、若しくはこれに反対し、又は候補者を推薦、支持、反対し、あるいは国際関係に関し論議すること等によって、現実の政治に影響を与えると認められるような行動をいう。なお、その該当性の判断にあたっては、言動の内容だけでなく、それがなされた環境、場所、対象等の諸事情を斟酌して法律的価値判断を行う必要がある。
重要事実
被告人は、連合国最高司令官の覚書に基づき制定された昭和22年勅令第1号(追放令)により、いわゆる「覚書該当者」として仮指定を受けた者である。被告人は、自身がかつて総裁を務め、門下生らが幹部として出席した政党(立憲養正会)の政策会議において、政治の粛正や経済対策等の議案に対し批判や自己の意見を開陳した(判示第1の(1))。また、政治評論雑誌に政治上の主張や批判を内容とする論稿を多数掲載し、会員ら約3000名に配布した(判示第1の(2))。さらに、雑誌社の役職員に就いたことも認定された。
あてはめ
まず、政策会議における言動について、被告人はかつての総裁という声望を有し、出席者が門下生であるという環境下で、政党の施策や活動の企画決定に関わる議案に意見を述べている。これは、政党の施策を推進・支持し、現実の政治に影響を与える行動であるといえる。次に、雑誌への論稿掲載について、政治上の主張を不特定多数(会員等)に向けて発信する行為は、印刷された文章を通じた手段であっても、同様に政党の主義綱領を推進し現実の政治に影響を与える行動であるといえる。したがって、これらはいずれも追放令が禁ずる「政治上の活動」に該当する。
結論
被告人の所為は、追放令15条1項にいう「政治上の活動」に該当し、これを処罰した原判決に違法はない。
実務上の射程
憲法制定後の占領下における特殊な法秩序(ポツダム宣言受諾に伴う枠組み)を前提とした判旨であり、現代の「政治活動」の定義に直ちに一般化できるものではないが、言動の該当性判断において「内容だけでなく環境や事情を斟酌する」という枠組みは、公務員の政治活動禁止(職務の公正維持)等の現代的論点におけるあてはめ手法として参考になる。
事件番号: 昭和25(あ)84 / 裁判年月日: 昭和25年2月21日 / 結論: 棄却
原判決が昭和二二年勅令第一號第一五条にいう「政治上の活動」の意義について、最高裁判所の判例に示された解釈に從つて被告人の行為を判断しているときは、たとえ判例の適用あやまつたとしても刑訴法第四〇五条第二號にいわゆる「判例と相反する判断をした」ということはできない。
事件番号: 昭和25(あ)2878 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧公職追放令(昭和22年勅令第1号)に基づく「政治上の活動」とは、現実の政治に影響を与えるものと認められるような行動を指し、税金闘争を支持する演説等はこれに該当する。 第1 事案の概要:正規陸軍将校であった被告人は、覚書該当者として指定(公職追放対象)されていた。それにもかかわらず、日本共産党地区…
事件番号: 昭和24(れ)555 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 棄却
一 推薦届出書に署名するにあたり、いわゆる通名をもつてしても右勅令第一五條第一項の「政治上の活動」たるを妨げない。 二 市教育委員會委員の推薦届出に關し、選舉人に對し、右届出書に推薦者としての署名を勸誘し、自からこれに署名する行爲は、昭和二二年勅令第一號(公職に關する就職禁止、退官、退職に關する件)第一五條第一項にいわ…
事件番号: 昭和25(あ)2025 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
農業調整委員会は食糧確保臨時措置法により設けられたもので、都道府縣農業調整委員会は都道府縣知事が、市町村農業調整委員会は市町村長が夫々農業計画及びその実施に関し必要な事項を決定するについて、必ずその議決を経なければならない議決機関であり(同法第四条第五条参照)しかも右農業計画というのは同法第二条第二項によれば「主要食糧…