農業調整委員会は食糧確保臨時措置法により設けられたもので、都道府縣農業調整委員会は都道府縣知事が、市町村農業調整委員会は市町村長が夫々農業計画及びその実施に関し必要な事項を決定するについて、必ずその議決を経なければならない議決機関であり(同法第四条第五条参照)しかも右農業計画というのは同法第二条第二項によれば「主要食糧農産物の生産数量、生産者保有数量若しくは、供出数量(代替供出の範囲及び比率を含む)又はその生産に必要な肥料農薬若しくは、農機具、等の配給数量について行政庁の定める計画をいう」ものであるから、市町村農業調整委員会は単なる経済団体ではなく、行政庁であり、公職である市町村長が右農業計画を定めるにあたり必ずその議決を経なければならない」の政治的性格を有する議決機関であつてこれが構成員である市町村農業調整委員会も亦、公職である、市町村長のする、主要食糧農産物の生産、保有供出に関する、政治上の施策決定に参与するものであるといわなければならない。そして同委員の選挙に関しては、その選挙権被選挙権について、同法に規定せられその選挙手続については、同法施行令の規定するところである。してみれば被告人がB農業調整委員会の委員候補者を推薦銓衡するための、会合に出席し、右委員候補となるべき者を推薦することは、間接とはいえ、公職である市町村長の政治上の施策又は活動の企画決定に参与しこれを推進し、支持し若しくは、反対することによつて、現実の政治に影響を及ぼすような行為であつて(前記当裁判所大法廷の判例の判示する)政治上の活動というにあたるものといわなければならない。(昭和二三年(れ)第一八六二号同二四年六月一三日大法廷判決参照)
農業調整委員会の性質と市町村農業調整委員候補者を推薦銓衡する会合における者の推薦行為は昭和二二年勅令第一号第一五条第一項にいう「政治上の活動」になるか
昭和22年勅令1号15条1項,昭和23年10月14日総理庁令農林省令12号
判旨
追放令15条にいう「政治上の活動」とは、公務員の政治上の施策の企画決定に参与し、これを推進・支持・反対することによって現実の政治に影響を及ぼす行為を指し、行政庁の諮問・議決機関の委員候補者を推薦する行為もこれに該当する。
問題の所在(論点)
追放令15条に規定される「政治上の活動」の意義、および公職の議決機関である農業調整委員会の候補者を推薦する行為がこれに該当するか。
規範
「政治上の活動」とは、公職にある者の政治上の施策または活動の企画決定に参与し、これを推進し、支持し、またはこれに反対することによって、現実の政治に影響を及ぼすような行為をいう。
事件番号: 昭和25(あ)84 / 裁判年月日: 昭和25年2月21日 / 結論: 棄却
原判決が昭和二二年勅令第一號第一五条にいう「政治上の活動」の意義について、最高裁判所の判例に示された解釈に從つて被告人の行為を判断しているときは、たとえ判例の適用あやまつたとしても刑訴法第四〇五条第二號にいわゆる「判例と相反する判断をした」ということはできない。
重要事実
被告人は昭和21年に連合国最高司令官覚書該当者(公職追放者)の指定を受けた者である。昭和23年、被告人は農業調整委員候補者推薦詮衡委員会に字会代表として出席し、特定の人物を候補者として推薦した。この行為が、昭和22年勅令第1号(追放令)15条が禁止する「政治上の活動」に該当するとして起訴された。農業調整委員会は、食糧確保臨時措置法に基づき、行政庁が農業計画を定める際に必ずその議決を経なければならない議決機関であった。
あてはめ
農業調整委員会は、食糧の生産・保有・供出量等の重要事項を決定する際に、公職である市町村長が必ずその議決を経なければならない「政治的性格を有する議決機関」である。このような機関の構成員は、行政庁による政治上の施策決定に直接関与する立場にある。したがって、その候補者を推薦・選定する会合に出席し特定の者を推薦する行為は、間接的ではあっても、公職者の政治活動を推進・支持するものであり、現実の政治に影響を及ぼす行為であると評価される。
結論
被告人の行為は、追放令15条にいう「政治上の活動」にあたる。したがって、原判決の判断に判例違反はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、特定の禁止規定における「政治的活動」の範囲を、公権力行使や行政施策への影響力という観点から定義している。司法試験においては、行政法や憲法における公務員の政治的行為制限の合憲性や、特定の活動が禁止対象に含まれるか否かを検討する際の「政治的」という概念の解釈指針として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2609 / 裁判年月日: 昭和25年11月24日 / 結論: 棄却
原判決は、いわゆる覚書該当者たる被告人が、農業協同組合理事立候補の決意をしている者に対し、「同じ組合の為め競争は避けて貰いたい」旨申向けて、立候補を断念するよう勧告し、又、農協合併案討議の為め開かれた農協臨時総会で、「組合総会に諮らず、幹部等が勝手に合併予約書を取交したのは不当だ、合併問題等は時期尚早である」という趣旨…
事件番号: 昭和25(あ)1064 / 裁判年月日: 昭和25年6月29日 / 結論: 棄却
所論は要するに本件第一事實の被告人の所爲は、判示縣選舉管理委員會の吏員に對し書類の形式上の取扱いについて注意を喚起したに過ぎないものであるという獨自の事實主張の下に昭和二二年勅令が第一號第一五條第一項の政治活動に當らないとするものである。しかるに原判決の認定した被告人の所爲は單にかゝる吏員に對し所論注意を喚起したにすぎ…
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和25(あ)2878 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧公職追放令(昭和22年勅令第1号)に基づく「政治上の活動」とは、現実の政治に影響を与えるものと認められるような行動を指し、税金闘争を支持する演説等はこれに該当する。 第1 事案の概要:正規陸軍将校であった被告人は、覚書該当者として指定(公職追放対象)されていた。それにもかかわらず、日本共産党地区…