判旨
旧公職追放令(昭和22年勅令第1号)に基づく「政治上の活動」とは、現実の政治に影響を与えるものと認められるような行動を指し、税金闘争を支持する演説等はこれに該当する。
問題の所在(論点)
1. 覚書該当者が行った税金闘争の支持・演説行為が、昭和22年勅令第1号に規定する「政治上の活動」に該当するか。 2. 当該行為について正当防衛の成否が認められるか。
規範
「政治上の活動」とは、現実の政治に影響を与えるものと認められるような行動を指す(最高裁既別判例の枠組みを引用)。また、正当防衛(刑法36条)が成立するためには、急迫不正の侵害に対し、権利を防衛するためにやむを得ずになされた行動である必要がある。
重要事実
正規陸軍将校であった被告人は、覚書該当者として指定(公職追放対象)されていた。それにもかかわらず、日本共産党地区委員長らと共同し、税務署において同盟が納税に関して行う要求や反対運動を支持し、または演説等を行う「税金闘争」に従事した。また、被告人は当該行為が正当防衛に当たると主張した。
あてはめ
被告人の行為は、政党の地区委員長らと協力し、税務行政という国家施策に対する反対運動を支持・扇動する演説を行ったものである。このような行為は、社会的な運動を通じて現実の政治過程や行政運営に影響を及ぼそうとする客観的性質を有しており、「現実の政治に影響を与えるものと認められるような行動」に該当するといえる。また、正当防衛の主張については、客観的に急迫不正の侵害が存在した事実が認められず、かつ防衛行為としての必要性・相当性も欠いているため、その成立要件を満たさない。
結論
被告人の行為は「政治上の活動」に該当し、かつ正当防衛も成立しないため、有罪とした原判決に憲法違反や解釈の誤りはない。
実務上の射程
事件番号: 昭和25(あ)84 / 裁判年月日: 昭和25年2月21日 / 結論: 棄却
原判決が昭和二二年勅令第一號第一五条にいう「政治上の活動」の意義について、最高裁判所の判例に示された解釈に從つて被告人の行為を判断しているときは、たとえ判例の適用あやまつたとしても刑訴法第四〇五条第二號にいわゆる「判例と相反する判断をした」ということはできない。
戦後の公職追放に関する特殊な判例であるが、法令上の「政治上の活動」の定義として『現実の政治に影響を与えるもの』という基準を示した点に意義がある。現在では、国家公務員法等の政治的行為の制限に関する解釈において、行為の目的・態様・公務の中立性への影響等を考慮する際の比較対象として参照される。
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和26(あ)2230 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和22年勅令第1号15条にいう「政治上の活動」は、目的犯のように政治的目的ないし政治的意図を要件とするものではない。政府等の施策活動に関する論議であり、現実の政治に影響を与える行動であれば、主観的な目的の有無にかかわらず同条の活動に該当する。 第1 事案の概要:被告人が行った論議が、昭和22年勅…
事件番号: 昭和25(あ)2025 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
農業調整委員会は食糧確保臨時措置法により設けられたもので、都道府縣農業調整委員会は都道府縣知事が、市町村農業調整委員会は市町村長が夫々農業計画及びその実施に関し必要な事項を決定するについて、必ずその議決を経なければならない議決機関であり(同法第四条第五条参照)しかも右農業計画というのは同法第二条第二項によれば「主要食糧…
事件番号: 昭和25(あ)992 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
一 現町長の反対派である町議会議員が、同町議会の議決を経た町民某に対する町民税及縣民税につき町長がその賦課額の計算上の過誤を認めこれを任意減額の決定をした行為は違法な行政処分であるとして同町長を相手取りその取消を求める行政訴訟を提起したところ該訴訟の提起の是非を論ずるため町民大会が開かれ、同町政が紛糾し町民の関心も昂ま…