一 現町長の反対派である町議会議員が、同町議会の議決を経た町民某に対する町民税及縣民税につき町長がその賦課額の計算上の過誤を認めこれを任意減額の決定をした行為は違法な行政処分であるとして同町長を相手取りその取消を求める行政訴訟を提起したところ該訴訟の提起の是非を論ずるため町民大会が開かれ、同町政が紛糾し町民の関心も昂まつて来たので前記町議会議員が自己の政治的立場を表明し一般町民の諒解支持を得ようとして町当局の措置を弾劾する趣旨のビラを印刷して同町民に配布した行為は昭和二二年勅令第一号第一五条第一一条第一二条等にいわゆる政治上の活動にあたる。 二 公職追放令第一一条第一二条所定の行為を厳格に禁止し、従つてこれに違反する行為を処罰すべきことは連合国最高司令官の要求であることは公職追放令の根拠となつた、昭和二一年一月四日附連合国最高司令官の「公務従事に適しない者の公職からの除去に関する覚書」第五項第六項に徴し明らかである。 三 本件起訴状に記載された、所論の各記載は、何れも公訴事実を起訴状に記載するにあたり、その訴因を明示するため犯罪構成要件にあたる事実自体若しくは、これと密接不可分の事実を記載したものであつて、被告人等の行為が罪名として記載された公職追放令第一一条若しくは第一二条にあたる所以を明にする為必要なものであるから起訴状に所論の如き記載があるからといつて、右起訴状は刑訴法第二五六条第六項に違反するものではない。
一 昭和二二年勅令第一号(公職追放令)第一五条第一一条第一二条にいわゆる「政治上の活動」にあたる事例 二 公職追放令第一一条第一二条違反行為を処罰することと連合国最高司令官の要求 三 起訴状に記載された事実と刑訴法第二五六条第六項
昭和22年勅令(1号公職追放令)15条,昭和22年勅令(1号公職追放令)12条,昭和22年勅令(1号公職追放令)11条,昭和22年勅令1号11条,昭和22年勅令1号12条,昭和22年勅令1号15条,憲法32条,昭和20年勅令542号,刑訴法256条6項
判旨
公職追放該当者が、現職町長の施策に反対してその弾劾を趣旨とするビラを配布する行為は、単なる社会活動ではなく、昭和22年勅令第1号(公職追放令)15条等が禁止する「政治上の活動」に該当する。また、同令に基づく処罰は、憲法19条の思想・良心の自由や21条の表現の自由を侵害するものではない。
問題の所在(論点)
公職追放該当者による現職町長の施策を批判するビラの配布が、公職追放令15条等の禁止する「政治上の活動」に該当するか。また、これを処罰することが憲法19条(思想・良心の自由)や21条(表現の自由)に違反しないか。
規範
事件番号: 昭和25(あ)84 / 裁判年月日: 昭和25年2月21日 / 結論: 棄却
原判決が昭和二二年勅令第一號第一五条にいう「政治上の活動」の意義について、最高裁判所の判例に示された解釈に從つて被告人の行為を判断しているときは、たとえ判例の適用あやまつたとしても刑訴法第四〇五条第二號にいわゆる「判例と相反する判断をした」ということはできない。
公職追放令における「政治上の活動」とは、単なる一般社会活動を指すのではなく、現職の行政責任者等の施策や活動に対して反対し、自己の政治的立場を表明して大衆の支持を得ようとする行為を含む。このような活動の制限は、連合国最高司令官の要請に基づく公職からの除去という目的上、憲法の保障する表現の自由等の適法な制限範囲内にある。
重要事実
被告人Aは元町長で、大政翼賛会支部長等の経歴から公職追放該当者であった。被告人Bは現職町議会議員でAと親交があった。AとBは、現職町長Cによる税額の減額決定を違法な行政処分であると批判。Bは自己の政治的立場を表明し町民の支持を得るため、Cを弾劾する趣旨のビラを印刷し、Aと協力して町民に配布した。これが公職追放令が禁止する政治活動の禁止規定に抵触するとして起訴された。
あてはめ
被告人Bが行ったビラの配布は、単なる社会活動にとどまるものではない。当時、町政が紛糾し町民の関心が高まっていた状況下で、現職町長Cの施策に反対する政治的意図をもって行われたものである。また、行政訴訟の提起自体を処罰の対象としているのではなく、訴訟遂行に必要とは認められない「弾劾ビラの配布」という手段を用いて政治的勢力の温存を図る行為は、明らかに政治活動としての性質を有する。したがって、本件行為は公職追放令の禁止対象となる活動にあたると評価される。
結論
被告人らの行為は公職追放令にいう「政治上の活動」に該当し、これを処罰することは憲法に違反しない。したがって、被告人らの上告を棄却する。
実務上の射程
戦後の特殊な統治状況下(占領下)における公職追放令の解釈に関する判例であり、現在の政治活動の自由の制限に関する一般論に直接用いるには慎重を要する。もっとも、純粋な訴訟行為や社会活動と、政治的影響力を行使する「政治活動」の区別基準として、行為の態様や目的から実質的に判断する手法は示唆に富む。
事件番号: 昭和25(あ)2878 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧公職追放令(昭和22年勅令第1号)に基づく「政治上の活動」とは、現実の政治に影響を与えるものと認められるような行動を指し、税金闘争を支持する演説等はこれに該当する。 第1 事案の概要:正規陸軍将校であった被告人は、覚書該当者として指定(公職追放対象)されていた。それにもかかわらず、日本共産党地区…
事件番号: 昭和26(あ)761 / 裁判年月日: 昭和26年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動とは、特定の選挙につき、特定の候補者の当選を目的として、投票を得または得させるために直接または間接に有利な影響を与える行為をいう。本件では、被告人の行為が当該定義に該当し、公職選挙法等による制限の対象となることが示された。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年勅令第1号第15条第1項(当…
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和25(あ)1064 / 裁判年月日: 昭和25年6月29日 / 結論: 棄却
所論は要するに本件第一事實の被告人の所爲は、判示縣選舉管理委員會の吏員に對し書類の形式上の取扱いについて注意を喚起したに過ぎないものであるという獨自の事實主張の下に昭和二二年勅令が第一號第一五條第一項の政治活動に當らないとするものである。しかるに原判決の認定した被告人の所爲は單にかゝる吏員に對し所論注意を喚起したにすぎ…