原判決は、いわゆる覚書該当者たる被告人が、農業協同組合理事立候補の決意をしている者に対し、「同じ組合の為め競争は避けて貰いたい」旨申向けて、立候補を断念するよう勧告し、又、農協合併案討議の為め開かれた農協臨時総会で、「組合総会に諮らず、幹部等が勝手に合併予約書を取交したのは不当だ、合併問題等は時期尚早である」という趣旨の発言をして、組合幹部等の組合一本化の運動を比判し、れに反対したという二つの事実を認定し、これを以て昭和二二年勅令第一号第一五条第一項にいわゆる「政治上の活動」をした場合に当ると判断したのであつて、所論のような雑談中の独語や単に農協組合員としての言動を「政治上の活動」と断定したものではない。そして、原判決認定の右事実はその挙示する証拠によつてこれを認めることができるし、農協の理事たる地位が公職に該当することは昭和二三年総理庁令農林省令第二号の規定によつて疑問の余地がない。したがつて原判決が被告人の右所為を昭和二二年勅令第一号第一五条第一項違反として処断したのは、もとより正当である。
昭和二二年勅令第一号第一五条第一項に、いわゆる「政治上の活動」に当る事例と農業協同組合の理事たる地位は公職に当るか
昭和22年勅令15条1項,昭和23年総理庁令農林省令2号
判旨
公職追放令(昭和22年勅令第1号)に基づく覚書該当者が、農業協同組合理事への立候補を断念するよう勧告し、かつ組合の合併案に反対する発言を行うことは、同令15条1項にいう「政治上の活動」に該当する。
問題の所在(論点)
公職追放令(昭和22年勅令第1号)15条1項に規定される、覚書該当者による「政治上の活動」の禁止について、農業協同組合理事の選任への干渉や、組合運営(合併問題)に対する反対運動がこれに該当するか。
規範
公職追放令に基づく「政治上の活動」とは、単なる雑談や個人の独白、あるいは一組合員としての純然たる私的言動に留まらず、特定の役職への就任(立候補)に干渉したり、組織の運営方針や統合等の重要な方針決定に対し、一定の意図を持って働きかけたりする行為を指す。また、農業協同組合理事のような法令により指定された公職に関する言動は、同令の規制対象となる政治的性格を有する。
事件番号: 昭和25(あ)2025 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
農業調整委員会は食糧確保臨時措置法により設けられたもので、都道府縣農業調整委員会は都道府縣知事が、市町村農業調整委員会は市町村長が夫々農業計画及びその実施に関し必要な事項を決定するについて、必ずその議決を経なければならない議決機関であり(同法第四条第五条参照)しかも右農業計画というのは同法第二条第二項によれば「主要食糧…
重要事実
被告人は、公職追放令によるいわゆる覚書該当者であった。被告人は、農業協同組合理事への立候補を決意していた者に対し、「同じ組合のため競争は避けてもらいたい」と述べて立候補の断念を勧告した。また、農協臨時総会において、幹部が独断で合併予約書を交わしたことを不当と批判し、時期尚早であるとして組合一本化の動きに反対する発言を行った。
あてはめ
被告人の行為は、単なる雑談や独語ではなく、他者の立候補を断念させるという具体的・組織的な働きかけである。農業協同組合理事の地位は省令により公職に該当すると規定されており、これに関する勧告は公職選挙の公正を害する政治的干渉といえる。また、総会における合併反対の発言は、組合幹部の運動を批判し、組織の存立や運営に影響を及ぼす意図的な反対運動であり、一組合員としての域を超えた政治的性格を帯びた活動と評価される。
結論
被告人の行為は、昭和22年勅令第1号15条1項にいう「政治上の活動」に該当し、同条違反として処断される。
実務上の射程
本判決は、特定の組織(農協等)内での活動であっても、その役職が公職として指定されている場合や、組織の運営に実質的な影響を与える活動については、追放令上の「政治上の活動」に該当し得ることを示している。現代の公職選挙法等における「政治活動」の解釈においても、その態様や目的から私的な言動との区別を行う際の参考となる。
事件番号: 昭和25(あ)84 / 裁判年月日: 昭和25年2月21日 / 結論: 棄却
原判決が昭和二二年勅令第一號第一五条にいう「政治上の活動」の意義について、最高裁判所の判例に示された解釈に從つて被告人の行為を判断しているときは、たとえ判例の適用あやまつたとしても刑訴法第四〇五条第二號にいわゆる「判例と相反する判断をした」ということはできない。
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和25(あ)1064 / 裁判年月日: 昭和25年6月29日 / 結論: 棄却
所論は要するに本件第一事實の被告人の所爲は、判示縣選舉管理委員會の吏員に對し書類の形式上の取扱いについて注意を喚起したに過ぎないものであるという獨自の事實主張の下に昭和二二年勅令が第一號第一五條第一項の政治活動に當らないとするものである。しかるに原判決の認定した被告人の所爲は單にかゝる吏員に對し所論注意を喚起したにすぎ…
事件番号: 昭和25(あ)2878 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧公職追放令(昭和22年勅令第1号)に基づく「政治上の活動」とは、現実の政治に影響を与えるものと認められるような行動を指し、税金闘争を支持する演説等はこれに該当する。 第1 事案の概要:正規陸軍将校であった被告人は、覚書該当者として指定(公職追放対象)されていた。それにもかかわらず、日本共産党地区…