一 所論の公職に關する就職禁止、退官退職等に關する改正勅令第一五條第一項は、候補者の届出又は推薦届出に關する連署行爲自体を候補者の推薦届出と同様に取扱い、これを政治上活動に含めたことは、同條の文理解釋上明かである。しかも、同條の規定の趣旨は覺書該當者自身の政治上の活動行爲を禁止するにあるのであるから、いやしくも覺書該當者が公選による公職の候補者の届出又は推薦届出に關する連署をした以上、政治上の活動を行つたものであつて、その連署について覺書該當者でない第三者の行爲である届出がなされたかどうか、その連署が後日取消されたかどうかは、犯罪の成否には關係がなく、從つて犯罪の構成要件を組成する事實ではないのである。されば、原審が被告人の署名捺印した推薦連署表が教育委員候補者Aの推薦届出に添附使用されたことを判示しなかつたからといつて、原判決には所論のような理由不備の違法はない。 二 いやしくも、覺書に掲げる條項に該當する者としての指定を受けた者はその指定が適法に取消されない限り、覺書該當者であることの意識があるのが通常である。されば、原判決が論旨摘録のように判示したのは、被告人等においてその認識のあつたことを判示した趣旨と解されるのであるから、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。
一 昭和二二年勅令第一號の候補者の推薦届出に關する連署をした場合その届出の有無等につき判示することの要否 二 覺書該當者として指定を受けた者の自覺と責任
昭和22年勅令1號,昭和22年勅令77號15條
判旨
公職追放の「覚書該当者」による推薦届出の連署行為は、それ自体が禁止される政治活動に該当し、第三者による届出の有無や連署の取消しは犯罪の成否に影響しない。また、行為者が禁止対象の連署であると認識していれば、それが「政治活動」に該当することの主観的な自覚がなくても犯意は認められる。
問題の所在(論点)
1. 覚書該当者が候補者の推薦届出に関する「連署」を行った際、実際に届出がなされなかったり、連署が取り消されたりした場合でも、禁止される「政治上の活動」として犯罪が成立するか。2. 故意(犯意)の成立において、行為が「政治上の活動」に該当することの認識まで必要か。
規範
1. 候補者の届出または推薦届出に関する連署行為は、公職に関する就職禁止等の規定(旧勅令)の文理解釈上、それ自体が候補者の推薦届出と同様に「政治上の活動」に含まれる。2. 構成要件的行為は「連署」自体にあり、その後の届出の成否や取消しの有無は犯罪の成立を左右しない。3. 犯意については、当該行為が禁止対象であること(推薦連署表への署名等)を認識していれば足り、それが「政治上の活動」に該当するという法的・社会的性格まで自覚している必要はない。
事件番号: 昭和24(れ)554 / 裁判年月日: 昭和24年8月25日 / 結論: 棄却
一 覺書該當者が公選による候補者を當選せしめる目的で、先ず推薦届出をし次いでその選舉運動をした場合、右一連の行爲のうち、推薦届出の所爲のみを提えて昭和二二年勅令第一號第一五條第一項にいわゆる政治活動をしたものと見ても差支えない。 二 覺書該當者が公選による候補者を當選せしめる目的で、その推薦連署表に署名捺印して推薦届出…
重要事実
被告人Bは、連合国軍最高司令官の覚書により特定の公職への就職を禁止された、いわゆる「覚書該当者」であった。被告人は、昭和23年10月に施行される和歌山県教育委員選挙に際し、委員候補者Aの推薦連署表であることを認識した上で、これに署名捺印した。この行為が、公職に関する就職禁止、退官退職等に関する改正勅令15条1項に規定される、覚書該当者による「政治上の活動」の禁止に抵触するとして起訴された。
あてはめ
1. 勅令15条1項の趣旨は、覚書該当者自身の政治活動を禁止する点にある。被告人が候補者Aの推薦連署表に署名捺印した以上、その時点で政治上の活動を行ったといえ、第三者による届出の有無や事後の取消しは、既に完了した構成要件的行為(連署)の成否に影響しない。2. 犯意について、被告人は教育委員候補者の推薦連署表であると認識して署名捺印しており、自己の行為の内容を把握している。かかる行為を行えば社会的影響が生じることは推断可能であり、たとえ「政治上の活動」であるとの自覚がなくても、故意を認めるに十分である。
結論
覚書該当者が推薦連署表に署名捺印した時点で犯罪は成立する。また、行為が推薦連署であることの認識があれば、犯意は認められる。
実務上の射程
行政上の禁止規定に違反する罪(行政刑罰)における、故意の認識対象の範囲を示す。特に「政治活動」のような評価的な構成要件概念について、その法的性質の認識までは不要であり、事実的側面(推薦連署表への署名等)の認識があれば故意を肯定できるとする実務上の指針となる。
事件番号: 昭和23(れ)1862 / 裁判年月日: 昭和24年6月13日 / 結論: 棄却
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときの…
事件番号: 昭和24(れ)555 / 裁判年月日: 昭和24年7月9日 / 結論: 棄却
一 推薦届出書に署名するにあたり、いわゆる通名をもつてしても右勅令第一五條第一項の「政治上の活動」たるを妨げない。 二 市教育委員會委員の推薦届出に關し、選舉人に對し、右届出書に推薦者としての署名を勸誘し、自からこれに署名する行爲は、昭和二二年勅令第一號(公職に關する就職禁止、退官、退職に關する件)第一五條第一項にいわ…
事件番号: 昭和26(あ)2230 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和22年勅令第1号15条にいう「政治上の活動」は、目的犯のように政治的目的ないし政治的意図を要件とするものではない。政府等の施策活動に関する論議であり、現実の政治に影響を与える行動であれば、主観的な目的の有無にかかわらず同条の活動に該当する。 第1 事案の概要:被告人が行った論議が、昭和22年勅…
事件番号: 昭和26(あ)1560 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
覚書該当者の政治上の活動は前記法令の禁ずるところであつて、たとえ覚書該当者指定手続に錯誤があり、またはその後その指定が解除されても、一旦覚書該当者として法禁を犯した事実に対しては処罰を免れないのである。