一 上告人の住所が内閣總理大臣にとり知り得る状況にあつたにかかわらず上告人に通知しなかつたことは、追放令の假指定手續が追放に關する法令の規定する要件を完備していないことになるとの論旨第二點は判例(昭和二三年(れ)第一八六二號同二四年六月一三日大法廷判決參照)にいわゆる追放該當者として指定されたことが無効であるとの主張に當るから、原判決が右論旨をもつて理由のないものと説示してこれを排斥したのは正當であつてこれを以て憲法第三二條いわゆる裁判を受ける權利を奪つたものとはいえない。 二 一九四五年九月三日連合國最高司令官指令第二號第一部第四項には「發セラレタル何レカノ訓令ノ意義ニ關シ疑義發生スルトキハ發令官憲ノ解釋ヲ以テ最終的ノモノトス」とあつて所論指摘の「總司令部政治部」は右「發令官憲」に該當し且つ該指摘は、一九四六年一月四日附最高司令部の好ましからざる人物を公職より排除することに關する指令の最終有權的の解釋を示したものであるから、日本の裁判所を絶對に拘束するものであること多言を要しない。されば該指摘をもつて最高司令官の指令ではなく、從つて日本の裁判官を拘束しない旨の所論は當らない。
一 追放該當者として假指定された者に對する通知についての日本裁判所の審判權の有無と憲法第三二條 二 一九四八年二月四日附連合國最高司令官總司令部政治部發最高裁判所長宛指摘の日本裁判所に對する拘束力
昭和22年勅令1號公職に關する就業禁止、退官、退職等に關する件,昭和22年閣令内務府令1號昭和22年勅令1號施行にする件,5條,1948年2月4日附指摘(裁判所時報5號所載),憲法32條,1945年9月3日附連合國最高司令官指令2號1部4項
判旨
連合国最高司令官の指令に基づく公職追放手続の効力について、日本の裁判所は、同手続が内閣総理大臣の錯誤に基づくか否か等の無効事由を審判する裁判権を有しない。また、連合国総司令部による指令の解釈は、日本の裁判所を拘束する最終的な権限を有する。
問題の所在(論点)
連合国最高司令官の指令(ポツダム宣言受諾に伴うもの)に基づき行われた公職追放処分の有効性を、日本の裁判所が審理・判断する権限を有するか。
規範
連合国最高司令官の指令の履行に関する除去又は排除の手続(追放手続)に対し、日本の裁判所は裁判権を有しない。連合国側が発した指令の意義に関し疑義が生じた際の解釈は、発令官憲によるものを最終的なものとし、日本の裁判所を絶対に拘束する。
事件番号: 昭和25(れ)1021 / 裁判年月日: 昭和25年12月20日 / 結論: 棄却
一 A組合の主事であつたことを調査表に記載しなかつたたという公訴事実と、同組合の主宰者であつたことを調査表に記載しなかつたという事実とは公訴事実の同一性がない。 二 調査表に不実の記載をした罪については、不実であることについて犯意を要するのであるが、その犯意は未心的故意をもつて足りる。
重要事実
上告人は、昭和22年勅令第1号に基づき公職適否審査委員会又は内閣総理大臣により覚書該当者として仮指定された。上告人は、内閣総理大臣が上告人の住所を知り得たにもかかわらず通知を怠った等の手続上の瑕疵を主張し、当該仮指定手続の無効および裁判を受ける権利(憲法32条)の侵害を訴えて上告した。
あてはめ
連合国総司令部政治部は、追放手続に対し日本の裁判所が裁判権を有しない旨を指摘している。この指摘は、最高司令官の指令に関する最終有権的解釈を示すものであり、日本の裁判所を拘束する。したがって、仮指定が内閣総理大臣の錯誤に基づくか否か、あるいは通知の欠如等の手続的要件の不備を理由に無効を争うことは、判例の趣旨に照らし、日本の裁判所の権限外である。裁判権がない以上、原審が証拠調べを行わず上告人の主張を排斥したことは正当であり、憲法32条違反も認められない。
結論
日本の裁判所は公職追放手続の無効を審判する権限を有しないため、手続の瑕疵を理由とする上告は理由がない。
実務上の射程
連合国占領下の特殊な法的状況における裁判権の限界を示した判例である。行政法上の「裁判統制の及ばない行為」の一種として位置づけられるが、現在の主権下における行政処分には直接妥当しない。ただし、国際的な合意や高度な政治的背景を持つ行為に対する司法審査の謙抑性を検討する際の歴史的素材として参照される。
事件番号: 昭和26(あ)1560 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
覚書該当者の政治上の活動は前記法令の禁ずるところであつて、たとえ覚書該当者指定手続に錯誤があり、またはその後その指定が解除されても、一旦覚書該当者として法禁を犯した事実に対しては処罰を免れないのである。
事件番号: 昭和24(れ)425 / 裁判年月日: 昭和24年7月23日 / 結論: 棄却
記録を調べて見るに、所論書類はその編綴の個所から見て、原審第一回公判期日前に原裁判所え提出されたことが伺はれるし、又原審公判廷では右書類について證據調をしなかつたことは所論のとおりである。しかし所論の各書類は本件訴訟關係人から證據物又は證據書類として證據調を求める趣旨の下に提出されたものとは到底認めることができない。從…
事件番号: 昭和24(れ)356 / 裁判年月日: 昭和24年3月24日 / 結論: 破棄差戻
原判決摘示の被告人の供述部分は、寧ろ被告人が假指定の事實を知らなかつた有力なる反證と見るのが相當である。しかるに原判決が被告人のその前後の供述部分を無視抹殺して全然反對の立證趣旨にこれを供したのは實驗則に反して事實を認定した違法があるものといわざるを得ない。
事件番号: 昭和25(あ)84 / 裁判年月日: 昭和25年2月21日 / 結論: 棄却
原判決が昭和二二年勅令第一號第一五条にいう「政治上の活動」の意義について、最高裁判所の判例に示された解釈に從つて被告人の行為を判断しているときは、たとえ判例の適用あやまつたとしても刑訴法第四〇五条第二號にいわゆる「判例と相反する判断をした」ということはできない。