判旨
刑事訴訟法291条の手続終了後、証拠調べに入る前に裁判官が被告人に対し公訴事実について質問することは、必ずしも違法とはいえない。
問題の所在(論点)
冒頭手続終了後、証拠調べ開始前に裁判官が行う被告人質問は、刑事訴訟法の定める審理の順序に照らして違法となるか。
規範
刑事訴訟法291条の権利質問・罪状認否の手続が終了した後、本格的な証拠調べに入る前の段階において、裁判官が被告人に対し公訴事実について質問をすることは、直ちに同法の規定に抵触するものではなく、必ずしも違法であるとは断定できない。
重要事実
被告人の第一審公判において、冒頭手続(刑訴法291条)が終了し、証拠調べに移行する前の段階で、裁判官が被告人に対して公訴事実に関する質問を行った。弁護人は、このような審理の順序や方法が違法であるとして上告した。
あてはめ
本件における第一審公判調書によれば、裁判官が証拠調べ前に被告人への質問を行っている。このような審理の順序や方法は、被告人の黙秘権保護や証拠裁判主義の観点から刑事訴訟法の精神に完全に添うものとは言い難い側面(「嫌がないではない」)がある。しかし、大法廷判例(昭和25年11月20日判決)の趣旨に照らせば、この手続上の先後は直ちに重大な違法を構成するものとはいえず、審理を無効とするほどの違法性は認められない。
結論
本件第一審の審理は違法であるとは断定できず、上告は棄却される。
実務上の射程
実務上、証拠調べ前の被告人質問は、現在では被告人の供述調書の取調べ等と同様に「証拠調べ」の枠組みで整理されるべきだが、本判例は裁判官による補充的な質問の許容性を広く認めるものである。答案上は、公判手続の順序(刑訴法291条から292条への流れ)の合憲性・適法性が問われる場面で、実体的真実発見の要請と手続的正義の調和の観点から引用可能である。
事件番号: 昭和27(あ)5758 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判供述に証拠能力がない場合であっても、他の適法な証拠により犯罪事実が認められるならば、有罪判決を維持することができる。 第1 事案の概要:被告人が起訴された事案において、第一審判決は被告人の公判廷での供述を証拠として用いていた。弁護人は、手続に違憲または違法があるとして上告したが、第一審…