所論の物件が麻薬たる塩酸モルヒネであつたかどうかの事実については自白だけで足り鑑定等の方法によつてこれを認定する必要はない。
麻薬の認定には自白のほかに鑑定等を必要とするか
刑訴法318条,刑訴法319条2項,刑訴法165条
判旨
共同被告人の供述は、被告人の自白を補強する証拠として認められ、その自白の真実性が肯認できる場合には、他の補強証拠を要することなく犯罪事実を認定できる。
問題の所在(論点)
憲法38条3項及び刑訴法319条2項の「補強証拠」として、共同被告人の供述を用いることができるか。また、その場合に共同被告人の供述自体に別途補強証拠が必要か。
規範
自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、それによって自白の真実性を肯認できるものであれば足りる。また、共同審理を受ける共同被告人の供述は、被告人の供述を補強する場合には、それ自体をさらに補強する他の証拠を必要とせず、独立の証拠能力を有するものと解する。
重要事実
被告人A、B、C、D、E、Fらは、麻薬(塩酸モルヒネ)に関する犯罪事実について起訴された。第一審判決は、各被告人の自白に加え、互いの供述(共同被告人の供述)を補強証拠として犯罪事実を認定した。これに対し被告人側は、当該物件が麻薬であることを証明するための鑑定等の客観的な補強証拠が欠如しており、共同被告人の供述のみによる補強は不当であるとして上告した。
あてはめ
本件において、第一審は各被告人の自白と、共同審理における他の共同被告人の供述を総合して事実を認定している。共同被告人の供述は、被告人の自白内容と合致し、その真実性を十分に裏付けるものである。判例(昭和24年5月18日大法廷判決)に照らせば、共同被告人の供述が被告人の自白を補強する場合、それ自体が独立した証拠能力を形成するため、別途物件の鑑定等を行う必要はない。
結論
共同被告人の供述は適法な補強証拠となり得るため、それにより自白の真実性が認められる以上、第一審判決に違憲・違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の補強証拠として「共同被告人の供述」が許容されることを明示した重要判例である。答案上では、共犯者の供述の証拠能力が争点となる際、伝聞例外(321条1項前段等)をクリアした後の「補強証拠としての適格性」の文脈で引用する。また、実質的な真実性の担保があれば、客観的な物証がなくても補強として十分であるとする判断基準として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)806 / 裁判年月日: 昭和30年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述(検察官面前調書等)は、被告人の自白を補強する証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人Dが関与した取引に関し、第一審判決は共同被告人Aの検察官に対する供述調書を採用した。当該調書には、本件取引の物件が塩酸モルヒネ注射液130本であった旨が記載されていた。弁護人は、共犯者の供述を被告人…