本件第一審判決が証拠として採用した検察官に対する被告人B及び同Cの供述調書中の記載を調べてみると被告人両名は各々所論麻薬を譲渡した事実を自白している。第一審判決はこれに加えるに、相被告人の検察官に対する供述調書中の記載等を補強証拠として採用し、これ等を綜合して判示の犯罪事実を認定したものである。このような場合には第一審判決には証拠法上の違法は存しない。
相被告人の検察官に対する供述は被告人の自白の補強証拠となるか
憲法38条3項,刑訴法319条2項,刑訴法317条,刑訴法321条1項2号
判旨
自白を補強する証拠は、それによって自白の真実性が肯認できるものであれば足り、共同被告人の供述は被告人の自白を補強する証拠となり得る。
問題の所在(論点)
共同被告人の供述が、被告人の自白に対する補強証拠(刑訴法319条2項)となり得るか。また、薬物犯罪において専門家の鑑定等がない場合に自白と共同被告人の供述のみで犯罪事実を認定できるか。
規範
自白の補強証拠(刑訴法319条2項)は、当該自白の真実性を担保し得るものであれば足りる。また、共同審理を受けている共同被告人の供述は、それ自体を補強する別の証拠を必要とすることなく、被告人の自白に対する独立した補強証拠としての能力を有する。
重要事実
被告人B及びCは、麻薬譲渡の事実について検察官に対し自白していた。第一審は、Bの自白に対して共同被告人Cの検察官に対する供述調書を、Cの自白に対してはBの供述調書を、それぞれ補強証拠として採用し、有罪を認定した。これに対し被告人側は、麻薬であるか否かの鑑定等が行われておらず、共犯者の供述のみで処罰したものであるとして、補強法則の違反を主張して上告した。
あてはめ
被告人B及びCは、各々が麻薬譲渡の事実を自白している。これに加え、相被告人の各供述が補強証拠として採用されており、これらを総合すれば、各被告人の自白の真実性を肯認するに足りる。自白と補強証拠によって事実が認定されている以上、共犯者の自白のみで処罰したとはいえない。また、自白の真実性が認められる以上、対象物が麻薬であるか否かについて、必ずしも専門家による鑑定等の証拠を重ねて必要とするものではない。
結論
共同被告人の供述は補強証拠となり得る。本件では自白と当該補強証拠により真実性が認められるため、憲法・刑訴法に違反しない。
実務上の射程
共犯者の供述の補強証拠適格を肯定した重要判例である。答案上は、補強法則の趣旨(誤判の防止・自白偏重による人権侵害の防止)から、実質的な真実性の担保があれば足りることを論じ、共同被告人の供述であっても独立の証拠として補強証拠になり得ると構成する際に用いる。
事件番号: 昭和28(あ)806 / 裁判年月日: 昭和30年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の供述(検察官面前調書等)は、被告人の自白を補強する証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人Dが関与した取引に関し、第一審判決は共同被告人Aの検察官に対する供述調書を採用した。当該調書には、本件取引の物件が塩酸モルヒネ注射液130本であった旨が記載されていた。弁護人は、共犯者の供述を被告人…