判旨
実在しない人物を証人等として申し立てたとしても、原審が当該人物を実在しないものと認定している以上、実在人を前提とした判例違反の主張は上告理由とならない。
問題の所在(論点)
事実上実在しないと認定された人物を前提として、実在人を対象とする判例に違反する旨を主張することが、刑事訴訟法405条の上告理由(判例違反)に該当するか。
規範
刑事訴訟法405条の上告理由において、判例違反を主張するためには、その前提となる事実関係(特に主張の対象となる人物の実在性等)が確定判決により認められていることを要する。事実誤認を主張するにすぎない訴訟法違反の主張は、同条の上告理由には当たらない。
重要事実
被告人の弁護人は、A外7名を実在の人物であるとして証拠調べ等を求めたが、第一審判決および原判決は、これらの人物を実在しないものと認定した。弁護人はこれを不服として、実在する人物に関する判例違反がある旨を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、第一審および原判決は、弁護人が主張するA外7名を実在しないものと明確に認定している。上告人が主張する「判例違反」は、これら人物が実在することを前提としているが、その前提となる事実は原判決によって否定されている。したがって、この主張は実質的に原判決の事実認定を争う単なる訴訟法違反の主張に帰するものであり、上告理由の適法な構成を欠いている。
結論
本件上告は刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
判例違反を理由とする上告において、前提となる事実関係が原判決で否定されている場合には、判例違反の主張自体が前提を欠くものとして門前払いされる。事実認定の不当を判例違反の形に擬装して主張しても、上告受理の対象とはならないことを示す。
事件番号: 昭和27(あ)5634 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条所定の上告理由に当たらない事項、及び原審で主張判断のない事項に基づく違憲の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、証拠書類に署名捺印を欠いている等の事由を挙げ、事実誤認を前提とする憲法違反、訴訟法違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた。…