破棄差戻又は移送後の第一審裁判所がその第一回公判期日前あらかじめ記録を調査し、且つ、公判廷において裁判官が証拠調をする前に被告人に対し、犯罪事実に関し可成り詳細に質問をし当事者の証拠調の請求を俟たないで記録中の各証拠書類及び証拠物を職権により証拠調をしたことが違法であるかどうかを争う主張は刑訴法第四〇五条第一項の憲法違反の主張にあたらない。
破棄差戻又は移送後の第一審の訴訟手続にする刑訴法第二五六条第六項、第二九一条、第二九二条、第二九八条及び第三〇一条の適用の有無と憲法違反の主張
刑訴法256条6項,刑訴法301条,刑訴法291条,刑訴規則217条,刑訴規則292条,裁判所法4条,裁判所法298条,憲法31条
判旨
憲法違反を主張する上告であっても、その実質が単なる刑事訴訟法違反の主張にすぎない場合は、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
形式上は憲法違反を主張しながら、その実質が刑事訴訟法違反の主張である場合に、刑訴法405条の上告理由として適法と言えるか。
規範
最高裁判所に対する上告において、憲法違反を形式的に主張していても、その実質が刑事訴訟法の規定に関する違反の主張に帰する場合には、刑訴法405条所定の上告理由には当たらないものと解すべきである。
重要事実
被告人および弁護人が、原判決等に対して憲法違反を理由に上告を申し立てた事案である。弁護人は憲法違反を主張の形式としていたが、その内容は刑事訴訟法違反を実質的に指摘するものであった。また、被告人自身の主張も、刑訴法405条に規定される上告理由(憲法違反または判例違反)に該当するかどうかが争点となった。
あてはめ
弁護人の上告趣意を検討すると、憲法違反を標榜してはいるものの、その具体的な論理展開の実質は刑事訴訟法の解釈・適用に関する不服に集約される。このような主張は、上告理由を限定した刑訴法405条の趣旨に照らし、実質において同条所定の上告理由を構成しない。また、被告人の上告趣意についても、明らかに同条の要件を充たさない。さらに、記録を精査しても職権で原判決を破棄すべき刑訴法411条の事由も認められない。
結論
本件上告は適法な理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
上告審の構造が事後審であることを前提に、上告理由を厳格に制限する刑訴法405条の解釈を示すものである。答案上は、憲法違反を装った事実誤認や法令違反の主張が不適法であることを指摘する際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和25(あ)996 / 裁判年月日: 昭和26年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が刑訴法411条の職権破棄事由の主張にすぎない場合は、適法な上告理由には当たらない。また、記録を精査しても同条を適用すべき事由が認められない限り、上告は棄却される。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を理由として最高裁判所に上告を申し立てた。しかし、その主…