判旨
犯行後に現場から立ち去る動きを見せている状況であっても、時間的・場所的近接性が保たれていれば、刑事訴訟法212条1項の「現に罪を行い終った者」に該当し、現行犯逮捕は適法である。
問題の所在(論点)
犯行後に現場を離れて歩行し始めた被疑者に対し、刑事訴訟法212条1項の「現に罪を行い終つた者」として現行犯逮捕することが認められるか。
規範
刑事訴訟法212条1項にいう「現に罪を行い終つた場合」とは、犯罪行為が終了した直後であって、犯罪と逮捕との間に密接な時間的・場所的関係が認められる場合を指す。被疑者が犯行現場から離脱しようとする動きを見せていたとしても、犯行との時間的・場所的な接着性が失われていない限り、同項の現行犯逮捕として許容される。
重要事実
被告人が犯行後、任意に車両から降車して歩行し、現場から立ち去ろうとしていた状況において、捜査官らが被告人を現行犯として逮捕した。弁護人は、被告人が現場を離脱し歩行を開始していた以上、もはや「現行犯」の状態にはなく、非現行犯事件としての手続を経るべきであったと主張して、逮捕の違法性を争った。
あてはめ
本件において、被告人は犯行後に降車して歩行し立ち去る途上にあったが、証人の供述によれば、その状況は客観的に見て犯罪の終了直後であると識別できるものであった。被疑者が物理的に移動を開始していたとしても、犯行との時間的・場所的な接着性が維持されており、犯人と犯行の明白性が認められる状態であれば、同条項の要件を充足するといえる。したがって、本件逮捕を現行犯逮捕と認めた原判断は正当である。
結論
被告人の逮捕は刑訴法212条1項の現行犯逮捕の要件を満たし、適法である。
実務上の射程
現行犯逮捕の「現行性」を判断する際、犯行の瞬間だけでなく、犯行直後の立ち去り際まで包含されることを示した。答案上では、犯行終了からの経過時間や距離を検討し、犯人と犯行の明白性が失われていないことを論証する際の根拠となる。
事件番号: 昭和25(あ)1366 / 裁判年月日: 昭和27年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法212条2項に基づく準現行犯逮捕の適法性は、同項各号の事由に該当し、かつ、犯罪の直後であることが明白であるか否かによって判断される。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪を行った後、司法警察員によって逮捕された。第一審の証人(A、B、C)の供述によれば、逮捕に至るまでの経緯において、被告…