判決の証拠説明は、その証拠の内容を逐一写録するの要なきは勿論、これを摘録することも亦必らずしも必要ではなく、その証拠の題目を掲げ趣旨を摘示する等、その証拠とする内容を認識し得る程度に挙示せられ、よつて如何なる事実がその証拠により若しくは他の証拠と綜合して証明されるかゞ明らかなる程度に判示あれば足るのである。
判決の証拠説明の程度
旧刑訴法360条1項
判旨
傷害罪は暴行罪の結果的加重犯であり、加害者に暴行の故意があれば、傷害の故意がなくても成立する。
問題の所在(論点)
傷害罪の成立において、傷害の故意(結果に対する予見や認容)が必要か。暴行の故意のみで傷害の結果について責任を問えるかが論点となる(傷害罪の結果的加重犯的性格)。
規範
傷害罪(刑法204条)は暴行の結果的加重犯である。したがって、被告人に暴行の故意が認められ、その暴行から傷害の結果が生じた以上、被告人に傷害を負わせる意図(傷害の故意)が欠けていたとしても、傷害罪の責任を負う。
重要事実
被告人は、相手方(A)が飛びかかってきた際、相手方を切る(傷害を負わせる)気はなかった。しかし、逃げるためにしばらく刀を振ったところ、その行為によって相手方に傷害を負わせるに至った。
事件番号: 昭和25(れ)1003 / 裁判年月日: 昭和25年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】傷害罪(刑法204条)の成立には、必ずしも傷害の意思(生理的機能障害を生じさせる認識・認容)があることを要せず、暴行の意思をもって暴行を加え傷害の結果を生じさせた場合も含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、被害者に対して暴行を加えたところ、被害者が傷害を負い、その結果として死亡するに至った(傷害…
あてはめ
被告人は「相手方を切る気にはなれなかった」と述べており、傷害の故意は否定される可能性がある。しかし、逃げるために「しばらく刀を振った」という事実は、相手方の身体に対する不法な攻撃(またはその危険を生じさせる行為)であり、暴行の故意があったことは十分に認められる。この暴行行為と発生した傷害結果との間には因果関係が認められるため、暴行の結果的加重犯として傷害罪の成立が肯定される。
結論
被告人に傷害罪が成立する。暴行の故意があれば、傷害の結果を意図していなくとも傷害罪としての責任を免れない。
実務上の射程
傷害罪を結果的加重犯と捉える確定判例であり、実務・答案上、傷害罪の故意の有無を検討する際の基礎となる。暴行の故意すら否定される場合を除き、傷害結果が生じていれば204条が適用される。また、正当防衛等の違法性阻却事由が認められない限り、違法の認識の欠如を理由に責任を免れることは困難である。
事件番号: 昭和28(あ)5025 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 棄却
被告人が被害者と対面するにおいては攻撃を受ける蓋然性が覆い状況の下に、被害者に対面して謝罪させ相手が攻撃して来たらこれに立ち向うため日本刀一振を拔身のまま携え、被害者の様子を窺ううち、被害者が被告人を認め矢庭に出刃庖丁をもつて突きかかつて来た場合、被害者が不正な侵害は急迫なものといえず、被告人の被害者に加えた傷害行為は…
事件番号: 昭和23(れ)756 / 裁判年月日: 昭和23年11月13日 / 結論: 棄却
原審に於ては被告人からも、辯護人からも、被告人の行爲が正當防衞に出たものであるということは主張されていないのであるから原審がこの點についての判斷を示さなかつたのは當然である。
事件番号: 昭和44(あ)1112 / 裁判年月日: 昭和44年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】急迫不正の侵害に対し、被告人がもっぱら攻撃意思に基づき行為に及んだ場合には、防衛意思が欠如し、また「やむを得ずにした」ものとは解されないため、正当防衛は成立しない。 第1 事案の概要:被告人は被害者から何らかの侵害を受けたが、それに対し被害者への攻撃意思をもって本件行為に及んだ。原審において被告人…