所論の原判決証拠説明中の二の証拠は、被告人の第一回公判期日における供述を裁判官更送のため公判手続が更新された第二回公判期日において繰り返したのであるから、証拠説明中には「当公廷における供述」と書くのが正確であるし、又所論原判決証拠説明中の三の証拠は、被告人が愛知縣経済防犯課長宛提出した始末書を証拠調べをしてその中の供述記載を証拠としたものであるから「始末書の「……………」旨の記載」とするのが正確であるが、原判決証拠説明中二の「供述記載」は「供述」の、同三の「供述」は「記載」の各誤記であることは、本件記録上明白であるから、原判決に理由不備又は理由齟齬ありとする所論は、採用することができない。
原判決の証拠説明中に「供述記載」は供述の「供述」は「記載」の各誤記ある場合と理由不備
旧刑訴法360条1項,旧刑訴法410条19号,旧刑訴法10条20号
判旨
判決書の証拠説明において「供述」と「記載」の表現に誤記があったとしても、記録上それが明白な誤記であると認められる場合には、判決に理由不備や理由齟齬の違法があるとはいえない。
問題の所在(論点)
判決書の証拠説明における「供述」と「記載(供述記載)」の誤記が、旧刑事訴訟法における理由不備または理由齟齬(現行法405条以下、335条1項、378条4号等に関連)として上告理由となるか。
規範
判決書における証拠の引用方法や表現が厳密には不正確であったとしても、訴訟記録に照らしてそれが単なる誤記であることが明白である場合には、判決に理由不備または理由齟齬の不法は存在しないものと解する。
重要事実
原判決の証拠説明において、被告人が第1回公判期日の供述を第2回公判期日(更新後)で繰り返したものを「供述記載」と表現し、また被告人が経済防犯課長宛に提出した始末書中の供述記載を証拠としたものを「供述」と表現していた。これに対し、被告人側は判決に理由不備または理由齟齬があるとして上告した。
事件番号: 昭和34(あ)397 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書の証拠説明において明白な誤謬がある場合であっても、本来の趣旨に従って文意を読解すべきであり、その読解に基づいて判決の正当性を判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人A、B、C、Dの各弁護人が量刑不当、判例違反、法令違反、事実誤認を理由に上告を申し立てた。特に被告人Bの弁護人は、原判決の理…
あてはめ
本件における原判決の証拠説明中、二の証拠(公判供述)を「供述記載」とした点は、実際には「供述」の誤記であり、三の証拠(始末書)を「供述」とした点は、実際には「記載」の誤記である。しかし、これらの事実は本件訴訟記録に照らせば明らかに誤記であることが明白である。したがって、表現上の不正確さはあっても、実質的に判決の理由が欠落していたり矛盾していたりするものとは評価できない。
結論
原判決に理由不備または理由齟齬があるとはいえず、本件上告を棄却する。
実務上の射程
判決書の細部の表現(特に公判供述と書面証拠の混同など)に誤りがある場合でも、それが記録上明らかな単純ミスであれば、判決の正当性に影響を及ぼさないことを示す。答案上は、形式的な不備が直ちに絶対的控訴理由等に該当するかを検討する際の限定解釈として活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1286 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定において複数の証拠を総合的に用いる際、証拠間に一部相容れない点があったとしても、論理則や経験則に反しない限り、裁判所が証拠を取捨選択して事実を認定することは許容される。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が採用した証拠の間に矛盾があること、および原判決が採用していない資料に照らせば認定が不…