一 原判決摘示第一の事実は、昭和二一年一一月一〇日頃及び昭和二二年一一月二五日頃の行為であり、同第二の事実は昭和二二年四月頃から同年一一月一一日頃までに亘る行為であるから、そのいずれに対しても昭和二二年一二月三〇日の改正前の食糧管理法施行規則を適用すべきものである。しかるに原判決はこれに対する適条にあたつて、それぞれ単に「同法施行規則第四条」及び「同法施行規則第二三条の七」と記載しているので一見したところでは現行の同法施行規則を適用したものであるかの如く見える。しかし現行の同法施行規則においては第四条は、判示第一の行為とは関係なき規定であり、又第二三条の七という箇条は存在せず、却つて改正前の同規則中の右両条が判示各事実に関する規定であるから、原判決は改正前の同規則の両条を適用したものであることが明かである。原判決が「改正前の」という語を明記しなかつたのは手落ちではあるが、実質的にはその適条に誤りはないから、これを以て原判決を破棄すべき違法のあるものとは認められない。 二 改正前の食糧管理法施行規則第二三条の七にいわゆる輸送とは、輸送機関による輸送だけでなく、一切の移動の意味であること、既に当裁判所の判例(昭和二五年れ第二三八号同年六月六日第三小法廷判決)の示す通りであつて、今なおこれを改める必要を認めない。 従つていわゆる「携行」も亦輸送である。
一 食糧管理法違反罪において形式的適条の誤りと旧刑訴法第四一一条 二 昭和二二年一二月農林省令第一〇三号による改正前の食糧管理法施行規則第二三条の七にいわゆる「輸送」の意義と右にいわゆる「携行」
昭和22年12月30日農林省令103号による改正前の食糧管理法施行規則4条,昭和22年12月30日農林省令103号による改正前の食糧管理法施行規則23条の7,旧刑訴法411条,旧刑訴法360条1項
判旨
食糧管理法施行規則23条の7にいう「輸送」とは、輸送機関によるものに限定されず、一切の移動を指し、いわゆる「携行」もこれに含まれる。
問題の所在(論点)
食糧管理法施行規則23条の7(改正前)に規定される、米麦等の「輸送」禁止の対象に、人による「携行」が含まれるか。
規範
食糧管理法施行規則(昭和22年12月30日改正前)23条の7における「輸送」とは、特定の輸送機関を利用した行為に限られず、目的物を移動させる一切の行為を意味すると解するのが相当である。
重要事実
被告人は、昭和21年から昭和22年にかけて、自ら生産した米を販売目的で自ら携行して移動させた。原審は、被告人が米麦等の生産者であり、かつ「法定の除外理由(旅行者や転居者等による制限範囲内の輸送)」がないにもかかわらず米を輸送したとして、改正前の食糧管理法施行規則23条の7に違反すると判断した。これに対し被告人側は、単なる携行は「輸送」に該当しないと主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人が行った行為は、自ら生産した米を移動させるものであった。同条が規制の対象とする「輸送」という用語の意義について検討するに、食糧管理の目的を達するためには移動の形態を問わず規制する必要がある。したがって、輸送機関を利用する場合のみならず、自ら持ち運ぶ「携行」であっても、物を場所的に移動させる行為である以上、同条にいう「輸送」に該当すると評価される。また、被告人は旅行者や転居者等の除外例にも該当しないため、同条違反の成立は免れない。
結論
米の携行は同規則にいう「輸送」に含まれる。したがって、法定の除外事由なく米を携行して移動させた被告人の行為について、同規則違反の成立を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
法令上の「輸送」概念について、文言を広く解釈して「一切の移動」を含むとした事例である。行政規制の目的から用語を機能的に解釈する際の手法として参照し得るが、現代の刑罰法規における明確性の原則との関係では、当時の食糧統制という特殊な背景を考慮する必要がある。
事件番号: 昭和25(れ)1182 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
食糧管理法にいわゆる主要食糧の輸送とは主要食糧の所在を一定の場所より他の場所に移動する一切の所為を指し、その移動する距離の長短を問はない趣旨と解するのを相当とするから、所論のように、たとい、判示A製粉所と被告人Bの判示住居とは同一大字内で接近しているとしても、被告人等の判示所為は同法令にいわゆる主要食糧の輸送に該当する…
事件番号: 昭和25(あ)2975 / 裁判年月日: 昭和27年10月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反と物価統制令違反が一所為数法の関係にある場合、一方が犯罪の証明が不十分であっても、他方の事実で有罪を宣告する以上、主文で個別に無罪を言い渡す必要はない。 第1 事案の概要:農業を営む被告人が、法定の除外事由がないにもかかわらず、昭和23年10月下旬に青年会支部長を介して会員らから未検…
事件番号: 昭和25(れ)1587 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下における上告において、被告人の主張が単なる事実誤認及び量刑不当に帰する場合、当時の特別法(刑訴応急措置法)に基づき、適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人が原審の判断に対して不服を申し立て、上告を提起した。しかし、その主張の内容は、原判決の認定した事実が誤っていると…