判旨
物価統制令違反の行為後、告示により価格統制が廃止された場合であっても、当該廃止前の違反行為について刑罰を科すことは妨げられない。いわゆる「限時法の理論」に基づき、法令の改廃が事実上の変遷に基づくものであれば、行為時の処罰規定が適用される。
問題の所在(論点)
行為後に価格統制(物価統制令の具体的規制)が廃止された場合、刑法6条や刑事訴訟法402条(旧法下における免訴事由等)との関係で、廃止前の行為を処罰することができるか。いわゆる法律の改廃と「事実上の変遷」の区別が問題となる。
規範
犯罪後の法令により刑に変更があったときは新法によるべきとされるが(刑法6条)、価格統制の廃止のような法令の改廃が、単なる事実上の変遷(経済情勢の変化等)に伴う措置にすぎない場合には、廃止前の違反行為の可罰性は消滅しない。
重要事実
被告人は甘藷および澱粉の販売価格につき、物価統制令に基づく制限を超えて取引を行った。しかし、当該行為後の昭和24年12月22日、物価庁告示第996号により、当該品目の販売価格統制が廃止された。被告人側は、価格統制の廃止により処罰の根拠が失われたと主張して上告した。
あてはめ
甘藷および澱粉の販売価格統制が廃止されたことは認められるが、これは経済情勢の変化に応じた政策的措置であり、過去の違反行為の当罰性を否定する性質のものではない。したがって、最高裁判所の既定の判例(昭和23年(れ)第800号)に照らし、価格統制廃止後であっても、その廃止前になされた物価統制令違反の行為は依然として処罰の対象となる。
結論
価格統制が廃止されたとしても、廃止前の違反行為は処罰を免れない。したがって、原判決の維持は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
限時法(または事実上の変遷)の議論において、価格統制の廃止が「法律の変更」に当たらないとする実務上の準拠枠組みを示す。司法試験においては、行政刑法や統制法規の改廃が「反省的考慮」によるものか「事実上の変遷」によるものかを区別する際の論拠として活用する。
事件番号: 昭和25(れ)1592 / 裁判年月日: 昭和26年1月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯行時に有効であった物価統制令が犯行後に廃止されたとしても、既に成立した物価統制令違反罪の刑罰を廃止するものではなく、犯罪の成立および刑の言渡しに影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が物価統制令に違反する行為を行った後、当該物価統制(法令)が廃止されたため、刑法6条(刑の変更)や刑事訴訟法…