一 所論聴取書の作成者である司法警察官警部代理巡査部長Aの名下に捺印のないことは所論のとおりである。二 しかし、同書類にはBの署名拇印並に右Aの署名が存し各葉の間にAの印で契印が施され、神戸市生田警察署印が押されており、さらに立会人巡査Cの署名押印があり、真正に成立した書類と認め得られるから、捺印を欠くの一事をもつて、所論のように証拠能力のない書類と断じ去ることはできない。
聴取書に作成者の捺印を欠いても真正に成立した書類と認められる場合とその書類の証拠能力
旧刑訴法71条,旧刑訴法337条
判旨
司法警察員作成の供述調書において、作成者の捺印を欠いていたとしても、署名、契印、警察署印、立会人の署名押印等が存在し、書類の真正な成立が認められる場合には、証拠能力を否定されない。
問題の所在(論点)
司法警察員が作成した書類において、作成者の捺印が欠けている場合、当該書類の証拠能力(形式的成立の真正)が認められるか。
規範
公務員が作成する書類等の形式的要件については、一部に不備(捺印の欠如等)があったとしても、書類全体の体裁(署名、契印、所属機関の印、立会人の署名押印等)から、その書類が真正に成立したものと認められる場合には、直ちに証拠能力が否定されるものではない。
重要事実
被告人の供述等を記載したと解される司法警察員作成の書類(所論書類)において、作成者である巡査部長Aの署名はあったが、その名下の捺印が欠落していた。一方で、当該書類には、供述者Bの署名拇印、作成者Aの署名および各葉間の契印、所属する警察署の印、さらに立会人である巡査Cの署名押印が具備されていた。
あてはめ
本件書類は、作成者Aの捺印を欠いているものの、A自身の署名が存し、かつ各葉間にAの印による契印が施されている。また、警察署印の押印や立会人Cの署名押印、供述者Bの署名拇印といった他の形式的要素が備わっており、書類が適正な手続を経て作成されたことを客観的に担保している。したがって、捺印の欠如という一事のみをもって書類の真正な成立を否定することはできず、証拠能力の要件を充足すると評価できる。
結論
作成者の捺印を欠く一事をもって証拠能力がないと断ずることはできず、証拠能力は認められる。
実務上の射程
刑事訴訟法上の書面(特に伝聞例外としての調書)の形式的有効性が争われる場面で活用できる。作成者の記名押印・署名等の要件に一部欠陥があっても、他の記載や印影等から作成の真正が担保される限り、証拠能力を肯定する柔軟な判断枠組みを示すものである。実務上は、321条前段等の書面の形式的成立を検討する際の補助的な論理として機能する。
事件番号: 昭和24(れ)361 / 裁判年月日: 昭和25年2月1日 / 結論: 棄却
一 本件公判請求書が引用した司法警察官意見書に契印のないことは所論のとおりであるけれどもそれがために、右書類は、所論のように直ちに無効となるものと解すべきではない。本件記録添付の右司法警察官意見書についてみるに、その筆跡墨色及び記載内容の續き具合からして、右意見書は全部司法警察官代理巡査部長Aが作成したものであることを…