判旨
代書された書面であっても、作成名義人が内容を承認し署名・捺印等を行っている場合、または証言により内容の同一性が確認されれば、伝聞例外としての要件を充足し得る。
問題の所在(論点)
他人が代書した被害者の盗難始末書について、証拠同意がある場合や公判廷での証言により内容が裏付けられた場合に、伝聞証拠としての証拠能力(刑訴法320条1項、321条、326条等)が認められるか。
規範
書面が他人によって代書されたものであっても、作成名義人本人がその内容を真実と認めて署名・押印し、または公判廷において当該書面の記載内容が自らの供述と同一である旨を認めた場合には、実質的に本人の供述書としての適格性を有すると解される。証拠同意(刑訴法326条)がある場合、その適法性はさらに補強される。
重要事実
被告人が窃盗事件等の刑事被告人として起訴された事案において、被害者Aの「盗難始末書」が証拠提出された。この書面は、Aが他人(警察官等)に代筆させたものであったが、第一審において弁護人が証拠とすることに同意していた。また、原審公判廷においてA本人が、当該書面は他人をして代筆させたものであること、およびその内容が盗難被害の顛末に関する自らの供述内容と同趣旨であることを認める証言を行った。
あてはめ
本件書面は形式的には他人が作成した書面であるが、第一審で弁護人が証拠とすることに同意しており、刑訴法326条の要件を満たす。さらに、原審におけるAの証言により、他人に代書させたものであることが推認され、かつその内容がAの供述内容と同一であることが確認されている。したがって、作成過程に形式的な瑕疵があったとしても、実質的にはAの供述を録取した書面と同視でき、証拠能力を否定すべき違法は認められない。
結論
本件盗難始末書の証拠能力を認めた原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
代書された供述書等の証拠能力が争われる際、証拠同意の有無や作成名義人による内容の追認(公判廷での裏付け証言)があれば、伝聞法則の例外として証拠能力が認められやすいことを示す。実務上は刑訴法326条や321条1項各号の解釈において活用される。
事件番号: 昭和28(あ)1484 / 裁判年月日: 昭和28年7月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟当事者の同意がある証拠書類については、伝聞法則等の証拠能力に関する制限に関わらず、裁判所の証拠調べの対象とすることができる。 第1 事案の概要:上告人は、原審において提出された証拠書類に関し、証拠能力の欠如や判例違反を主張して上告した。しかし、当該書類については、訴訟手続において検察官及び被告…