「木炭四俵が盗まれたとのお尋ねについては気附きませんでしたが、盗んだと犯人がいつておれば盗まれたものに相違ない。」旨の盗難被害始末書は証拠能力が極めて乏しいものではあるが、被告人が証拠とすることに同意した場合には証拠能力がないということはできないから自白の補強証拠とすることができる。
「盗んだと犯人がいつておれば盗まれたものに相違ない」旨の盗難被害始末書の証拠能力
刑訴法326条,憲法37条2項,憲法38条3項
判旨
被告人が証拠とすることに同意し、反対尋問権を放棄した証拠については、たとえその証明力が極めて低いものであっても、直ちに証拠能力が否定されるものではなく、自白の補強証拠として採用することができる。
問題の所在(論点)
証拠価値が著しく低いと解される被害者の始末書について、被告人の同意がある場合に、自白の補強証拠として採用することは許されるか。
規範
刑事訴訟法326条1項に基づく証拠同意があり、反対尋問権を放棄した書面については、伝聞法則の例外として証拠能力が認められる。また、証拠の証明力(証拠価値)が極めて乏しいという事情は、直ちにその証拠能力を否定する理由にはならない。
重要事実
窃盗被告事件において、第一審判決は被害者が作成した盗難被害始末書を被告人の自白を補強する証拠として採用した。被告人は第一審公判廷において、当該始末書を証拠とすることに同意し、反対尋問権を放棄していた。しかし、弁護人は上告審において、当該始末書の内容は証拠価値が極めて乏しく、断罪の資料に供することは違法であると主張した。
あてはめ
被告人は第一審公判廷において、被害者作成の盗難被害始末書を証拠とすることに同意し、本来有していた反対尋問権を放棄している。当該始末書の内容は証拠価値が極めて乏しいものであり、これを断罪の資料に供することは必ずしも好ましくはない。しかし、証拠同意の手続きを経て適法に取り調べられた以上、証拠能力を欠くとはいえない。したがって、自白の補強証拠としてこれを採用した判断に違法はない。
結論
被告人が同意した証拠は、たとえ証明力が低くとも証拠能力を否定し得ないため、自白の補強証拠として採用することは適法である。
実務上の射程
証拠同意(326条)の効力に関する初期の重要判例である。答案上は、伝聞証拠の証拠能力と証明力の評価を峻別する文脈で活用できる。同意がある以上、内容が不十分であっても補強証拠としての適格性(証拠能力)は否定されないことを示す際に用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1457 / 裁判年月日: 昭和27年11月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人が供述調書の証拠採用に同意している場合、伝聞法則の例外として適法に証拠能力が認められ、訴訟手続上の違法は存在しない。 第1 事案の概要:検察官が第一回公判廷において書証の取調請求を行ったが、後にこれを取り下げ、裁判官も取調べない旨の決定を下した。一方で、特定の供述調書(本件ではAの供述調書)…