原審が本件に適用した昭和二二年九月三日物価庁告示第五五八号はその後数次に亘る同庁告示で改正されたが、結局昭和二五年四月二〇日同庁告示第三〇六号によつて同二四年一〇月二五日同庁告示第八九〇号(動植物油脂等及び人造バターの販売価格の統制額指定の件)の一部が改正され、その結果右四月二〇日は以後本件A油については統制価格の指定なき状態にあつたことは所論のとおりである。しかし一旦成立した物価統制令違反罪の処罰が、かかる爾後における告示の廃止により左右されるものではないと解すべきことは当裁判所昭和二三年(れ)第八〇〇号同二五年一〇月一一日大法廷判決に示すとおりである。
にしん油の統制額に関する告示の廃止と「刑ノ廃止」
旧刑訴法363条2号,昭和25年4月物価庁告示306号
判旨
物価統制令違反の罪が成立した後に、告示の改正等により対象物資の統制価格の指定がなくなったとしても、一旦成立した犯罪の処罰は左右されない。
問題の所在(論点)
物価統制令違反の行為後、告示の改正によって当該物資の統制価格の指定が廃止された場合、刑訴法411条5号(旧刑訴法446条)の「刑の廃止」に該当し、処罰し得なくなるか。
規範
法令の改廃により刑が廃止された場合に刑を免除すると定める規定(刑法6条、旧刑訴法446条関連)があるが、物価統制令等に基づく価格指定の変更や廃止といった事実関係の変動を反映するにすぎない告示の改廃については、法律そのものの改廃には当たらず、過去の違法行為の可罰性に影響を及ぼさない(いわゆる限時法の理論に類する判断枠組み)。
重要事実
被告人は、当時の物価庁告示により統制価格が指定されていたA油を販売し、物価統制令違反として起訴された。原審判決後の昭和25年4月、物価庁告示の改正によりA油についての統制価格の指定が廃止され、自由価格での取引が可能となった。被告人は、価格指定の廃止により犯罪後の法令により刑が廃止された場合に当たるとして、上告した。
あてはめ
本件において、被告人がA油を販売した時点では昭和22年物価庁告示第558号により統制価格が存在し、物価統制令違反罪が成立していた。その後、昭和25年の告示改正によりA油の統制価格指定はなくなったが、これは経済情勢の変遷に伴う事実上の価格変更にすぎない。一旦成立した物価統制令違反罪の処罰は、かかる爾後の告示の廃止という事実上の変更によって左右されるものではなく、可罰性は維持されると解すべきである。
結論
一旦成立した物価統制令違反罪は、その後の告示による統制価格の撤廃によっても消滅せず、依然として処罰の対象となる。
実務上の射程
法令そのものの改廃ではなく、行政規則(告示)による具体的規制内容の変更にとどまる場合に、行為時の違法性を維持する判断指針として機能する。いわゆる「法律の変更」と「事実の変更」を区別し、事後的な規制緩和による免訴を否定する際の論拠として引用される。
事件番号: 昭和25(あ)1110 / 裁判年月日: 昭和26年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の罪が成立した後に統制額指定の告示が廃止されたとしても、既に成立した犯罪の可罰性は左右されない。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令に基づく統制額を超える価格で取引を行ったとして、同令違反の罪に問われた。しかし、当該犯罪の成立後、公判審理等の過程において、対象となっていた統制額を…