判旨
物価統制令に基づく価格指定の告示が事後的に廃止されたとしても、既に成立した犯罪の刑罰を廃止したものとは解されない。
問題の所在(論点)
法令の委任に基づく行政上の告示が事後的に廃止された場合、刑訴法411条ないし刑法6条が適用され、刑の廃止として処罰を免れるか。
規範
特定の行政上の規制(告示等)が将来に向かって廃止されたとしても、そのことが当然に刑法6条(刑の廃止)にいう「法律の変更」に該当し、既に成立した犯罪の可罰性を消滅させるものではない。
重要事実
被告人は昭和23年7月頃、物価統制令等に違反する行為を行った。しかし、判決前の昭和25年4月に、統制額を指定していた物価庁告示が将来に向かって廃止されたため、これが刑の廃止にあたるかが争点となった。
あてはめ
本件における物価庁告示の廃止は、将来に向かって統制額の指定を解いたものにすぎない。このような行政上の変更は、既に成立した犯罪の評価を根本的に変更し刑罰を廃止する理由にはならない。したがって、犯行時に適用されていた物価庁告示違反の罪は、告示廃止後も依然として可罰性を有する。
結論
本件告示の廃止は刑の廃止にはあたらないため、被告人を処罰した原判決を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「事実の変更」と「法律の変更」の区別を示唆する初期の重要判例である。行政規制の変更が単なる事実上の事情の変化(経済情勢の変遷等)に基づく場合は「法律の変更」に含まれないという法理を構成する際の基礎となる。
事件番号: 昭和25(あ)2911 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の犯罪成立後、価格指定の物価庁告示が廃止されたとしても、それは刑罰の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が物価統制令に違反する行為を行った後、当該行為の処罰の基準となっていた価格指定の物価庁告示が廃止された。被告人側は、この告示の廃止が刑罰の廃止に当…