旧刑訴法第四一〇条一三号にいう「法律により公判において取調ぶべき証拠」とは例えば同法第三四二条所定の証拠のごとくその取調が裁判所の自由裁量に属せず従つて法律上必ず公判において取調べなければならないような証拠の取調をいうのであつて(昭和二三月(れ)第一〇一号同二三年七月一四日大法廷判決)所論の刃渡り六寸の出刃庖丁は右にいわゆる法律により公判において取調ぶべき証拠に該当しないこと明らかである。
旧刑訴法第四一〇条第一三号にいわゆる「法律により公判において取調ぶべき証拠」の意義
旧刑訴法342条,旧刑訴法410条13号
判旨
旧刑事訴訟法下において、裁判所の自由裁量に属さず法律上必ず公判で取り調べるべき証拠に該当しない限り、証拠調べを行わないことに違法はない。凶器とされる出刃包丁などの証拠物は、法律上必ず取り調べるべき証拠には当たらない。
問題の所在(論点)
旧刑事訴訟法410条13号(現行法の証拠調べの必要性に関連)にいう「法律により公判において取調ぶべき証拠」の意義、および凶器(証拠物)がこれに該当するか。
規範
「法律により公判において取調ぶべき証拠」とは、裁判所の自由裁量に属さず、法律上必ず公判において取り調べなければならない証拠(例:旧刑訴法342条所定の証拠等)を指す。
重要事実
被告人が刃渡り六寸の出刃包丁を使用して傷害事件を起こしたとされる事案において、原審が当該出刃包丁について証拠調べを行わなかった。弁護人は、これが法律により取り調べるべき証拠の不取調べにあたり違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件で問題となっている「刃渡り六寸の出刃包丁」は、裁判所の自由裁量によらず法律上必ず取り調べなければならない証拠には該当しない。また、被告人の犯行事実は、司法警察官や検察官の聴取書等の他の証拠によって十分に明認できるものであり、原審が当該包丁を証拠調べしなかったことに違法性は認められない。
結論
本件の出刃包丁は「法律により公判において取調ぶべき証拠」に該当しないため、証拠調べを行わなかった原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所の証拠調べの裁量を認める判断枠組みとして機能する。現行刑訴法下においても、職権証拠調べの義務の範囲を画定する際の参考となるが、本判決は旧法下の解釈である点に留意が必要である。
事件番号: 昭和25(れ)1002 / 裁判年月日: 昭和25年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判における証拠調べの範囲と限度は、原則として事実審裁判所の自由裁量に属する。また、公判調書の記載に墨色や字形の相違があっても、筆跡が同一であり特段の反証がない限り、適法に作成されたものと解するのが相当である。 第1 事案の概要:被告人は暴行傷害罪に問われ、原審において有罪判決を受けた。弁護人…