論旨は、本件強盜殺人、同未遂の起訴に對し原審が單に殺人同未遂を認定し、強盜について審理判斷しなかつた、と非難する。しかし、犯罪の基本的事實が同一であるならば、舊刑訴法適用の事件においては強盜殺人同未遂の公訴事實の審理に當つて強盜の犯意の證明が十分でないと認めたときは、判決においてこれを殺人同未遂と認定することを妨げないのである。このような一罪の一部分については所論のごとき公訴の取消ということもあり得ないし、又既判力はその全部に及ぶのであるから、何ら被告人に不利益な裁判であるということはできず却つて法廷刑から見ても被告人に有利な裁判であつたといえるところであつて論旨は理由がない。
強盜殺人、同未遂の起訴事實に對し原審が殺人、同未遂の事實を認定したことと事實の同一性被告人に不利益の有無
刑法199條,刑法240條,舊刑訴法291條
判旨
強盗殺人・同未遂として起訴された事案において、強盗の犯意の証明が不十分な場合に、裁判所が訴因変更を経ず殺人・同未遂のみを認定しても、基本的事実が同一であり、被告人に不利益とはいえないため許容される。
問題の所在(論点)
強盗殺人罪等の公訴事実に対し、裁判所が訴因変更を経ずに、より軽い殺人罪等のみを認定して判決を下すことは許されるか(一罪の一部認定の可否)。
規範
基本的事実が同一である一罪の一部分について、公訴事実よりも軽い内容の犯罪を認定する場合、訴因変更の手続を経ずとも、裁判所は判決においてこれを認定することができる。既判力は全範囲に及び、法定刑も軽くなることから、被告人に不利益な裁判とはいえない。
重要事実
被告人は強盗殺人および強盗殺人未遂の罪で起訴された。原審は、証拠に基づき被告人が心神耗弱状態であったこと、および強盗の犯意については証明が不十分であることを認定した。その結果、原審は強盗の点については審理判断を示さず、殺人および殺人未遂の罪のみを認定して有罪判決を下した。これに対し、被告人側は強盗部分についての公訴取消しや審理判断がないことを不服として上告した。
あてはめ
本件における強盗殺人および同未遂の起訴に対し、その構成要素である殺人および殺人未遂を認定することは、基本的事実の同一性の範囲内にある。強盗の犯意が証明されない場合に、一罪の一部分である殺人罪等の成立のみを認めることは、被告人にとって法定刑が軽くなる方向の判断であり、不利益は存在しない。また、既判力が起訴された事実の全部に及ぶ以上、別途強盗の点について公訴の取消しや特別な判断を要するものではない。
結論
強盗殺人等の起訴に対し、殺人等のみを認定することは適法であり、訴因変更や強盗部分の個別の公訴取消しは不要である。
実務上の射程
訴因変更の要否に関する「一罪の一部認定」の典型例である。殺人罪の構成要件は強盗殺人罪に包摂されるため、縮小認定として許容される。実務上は、訴因変更なしに認定できる範囲(被告人の防御にとって不利益がない範囲)の限界を示す事例として機能する。
事件番号: 昭和45(あ)293 / 裁判年月日: 昭和47年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度そのものは憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。また、強盗殺人罪等の重大な犯罪に対して死刑を科すことは、諸般の情状を考慮した上でやむを得ない場合には憲法上許容される。 第1 事案の概要:被告人は強盗殺人等の罪に問われ、一審および二審において死刑の判決を受けた。弁護人は、死刑制度そ…
事件番号: 昭和23(れ)1680 / 裁判年月日: 昭和24年2月24日 / 結論: 棄却
被告人は巡査部長を射撃して、同人が被告人を追つかけることのできないようにしようと思つて、ことによつたら同人を射殺す結果になるかも知れないが、それもやむを得ないと考へ、ピストルを同人に向け發射し、同人が死んでしまつたのであるから、被告人が殺人罪に問われるのは當然である。